会報誌(DDKだより)

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2001年08月発行 第87号 DDKだより

巻頭言:銀行の査定厳格化による不良債権の増加

顧問  亀井賢伍       

  
 


 不良債権抜本処理の問題点のうち、痛み と 銀行の信頼性 については前回述べました。
 ここでは、銀行の査定厳格化による不良債権(「要管理債権」)の増加について考えることとします。
 「要注意先」への拡大
 政府の方針は「破たん懸念先」以下の不良債権を処理対象としていますが、この気運に乗じて、範囲を「要注意先」[注1]にまで拡げる動きがでてきました。
 実体経済の悪化に伴う不良債権の増加に、査定厳格化による拡大が加重されるわけで、中小企業への影響は倍加されます。

 「要管理債権」増加のからくり
 「要注意先」への貸出しのうち①3か月以上の延滞債権と②貸出条件緩和債権を「要管理債権」といいます。不良債権にカウントされます。
 貸出条件緩和債権の大半はa金利減免債権とb元本返済猶予債権です。
 今年3月期決算でT銀行が「要管理債権」を2000年9月末比8,600億円も増やし注目されました。今後他行も追随すると思われます。
 具体的手口を見てみましょう。
a金利減免債権
 信用リスクに見合った金利がとれているかどうか、の観点で見直し基準金利を引き上げる。
 身近の例で、1.625%から2.00%へ引上げ(引上げ幅 0.375%)があります。
b元本返済猶予債権
 短期のベタ貸し(反覆貸出し)で事実上長期となっているものや、結果的に残高維持になっているものを算入する。
 借入金が資本金の機能を果たしているような財務の実態を考えれば、影響は深刻です。

 銀行へ望むこと
 「要管理債権」には、景気がよくなれば業況回復が見込まれる企業への貸出しが含まれています。淘汰されるべき企業ときめつけないで有用な存在として、育てる立場で接して欲しいと思います。そのためにも、審査能力、わけても事業評価能力の向上が切望されます。


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 [注1]銀行の自己査定における債務者区分
  正常先、要注意先、破たん懸念先、
  実質破たん先、破たん先

 [注2]金融再生法による債権区分
   正常債権、要管理債権、危険債権、破産更生債権、および
   これらに準ずる債権