会報誌(DDKだより)

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2001年10月発行 第89号 DDKだより

巻頭言:水際の作為、不作為

専務理事  石田 仁       
    経営コンサルタント・社会保険労務士  
    東京中小企業家同友会理事  
    同 専門家グループ部会幹事長  
    東京都労働経済局 労働講座講師  
    著書『就業規則で会社がかわる』  
    (労働旬報社)ほか論文多数  

  
 


 11日の米国同時多発テロの衝撃が続いている。その余りにもショッキングな大惨事はテレビで繰り返し放映される度に軍事的報復も是とする世論が形成されてしまった。
 小泉首相はいち早く最大限の協力をブッシュ大統領に約束。おまけに国務副長官から「ショー・ザ・フラッグ」と恫喝され、自衛隊を後方支援部隊として参戦させることまで約束。すべて、国会審議なしで進められた。いくら何でも、平和憲法を有する我が国では到底見過ごすことができない暴挙である。何か借りでもあるのかと疑わざるを得ない。今回の「約束」は、99年に法制化されたアジア周辺の有事に際し日本がその後方支援にあたる、悪名高い「ガイドライン」法の範囲をも超えている。そこで臨時国会では新たな後方支援法を成立させるつもりだ。武器・弾薬の輸送だけでなく、提供も盛り込まれると言う。さらに、米軍基地を自衛隊に警備させる為に自衛隊法も改正する。 報復は報復を生み、最後は泥沼化する。テロ根絶には国際法及び国連憲章の尊重と、慎重な法に基づく裁きこそが求められよう。
 小泉首相の一人よがりの作為は認められるものではない。
 狂牛病問題も深刻である。9月10日に千葉県の乳牛に発病の疑いがかかった。当初農水省は問題の牛は焼却処分されたと発表。しかし14日には飼料として肉骨粉にされたと訂正。それからが大変。肉骨粉の行方。他方で問題の牛の感染経路の探索。驚いたことに感染牛探しは「自力で立てないなどの特有な症状」を人の目で判断するという調査だったという。ようやく、農水省は感染の疑いの牛はすべて焼却処分との通知を出した。また厚生労働省(家畜でいる場合は農水省、食肉の段階からは当該省)は感染しやすい月齢30か月以上の牛のすべてを食肉処理前に検査することを決めた。
 問題の根は深い。英国で狂牛病が発生したのは、86年のこと。96年には発生国である英国は牛の肉骨粉の使用と輸出を禁止した。肉骨粉が感染源と特定されたからにほかならない。にもかかわらず我が国は輸入も認め、使用も行政指導に留めた。やるべきことをやらない不作為は批判だけではすむまい。感染を断つ素早い措置を望む。