会報誌(DDKだより)

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2001年12月発行 第91号 DDKだより

巻頭言:不良債権処理の現場を見て

顧問  亀井賢伍       

  
 


 経済再生の第一歩として、不良債権の早期処理が叫ばれています。
 現場で、いま何が起こっているのでしょうか。
 去る10月27日、私は、明け渡し強制執行の現場を実見しました。
 93歳の寝たきりの母を抱える家族を退去させるため、救急車と医者を用意しての冷酷・非情な「処理」と聞き、座視できず駆けつけたのです。
 同じ思いで集った、多くの銀行被害者の腹の底からの訴えもあり、その日の執行は中止されました。
 帰りの道すがら、30数年も昔、聞いた話を思い起こしました。
 新任地のその県は、幕藩体制下、A・B・Cの三つの国でした。ご多聞に洩れず県民性は一様ではなく、反目もあります。そこでの軽口の比喩話です。
 “窮したとき、Aの人間は詐欺をする、Bは強盗を働き、Cは乞食になる”というものです。(伝聞通りの表現です。お許しを。)
 さて、昨今の銀行はどのタイプでしょうか。三つの技(わざ)に長け臨機応変に使い分けていないでしょうか。
 以下のような行動をとっていないと断言できるでしょうか。
 ・ 情報落差をよいことに顧客を騙す(詐欺商法)
 ・ 前言を翻して居直り、門答無用な取立てを強行する(強盗の論理)
 ・自己資本が不足したとき、或いは所有している株式を時価より高く買ってもらうため税金をねだる(乞食根性)
 かつて銀行員は「責任感が強く、高いモラルを持って公正な仕事をする」(9月30日付 日経 中外時評)として信頼されていました。「かつての誇り高い使命感を取り戻してほしい」(同)と切に望みます。

 ここでは言及しませんでしたが、金融当局の責任と役割は極めて大きく、裁判制度にも問題があります。
 とは言え、大切なことは金融被害の実態を社会的に明らかにすることです。
 椎名麻紗枝弁護士の近著『100万人を破滅させた大銀行の犯罪』は、そのため大いに役立ちます。