会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2001年12月発行 第91号 DDKだより
金融相談:欧米におけるペイオフの実情は?
Q. いよいよ日本でもペイオフが解禁されますが、欧米ではどうなっているのですか。--------------------------------------------------------------------------------
今月の相談員
田口 良一
国民金融公庫出身
祝経営研究所次長
A. 政府・日銀と経団連は、今度はどうしても実施すると主張し、その理由として、先進国では日本だけが実施していないこと、実施は国際公約である、そして韓国でも実施しているといっています。
ペイオフ制度があることとその運用をどう実施するかということは別問題です。米国では次のように運用されています。
①戦前1930年代には頻繁に用いられましたが、戦後は「ほとんど社会的影響を与えない微小金融機関だけに適用された」にすぎません。なぜか?破綻銀行を決済機関として利用している場合、不渡や不払が次々に起こるからです。
②戦後、米国史上2番目の破綻時代(88年~98年)でも、「ペイオフとなった金融機関の平均預金総額は6,700万ドル程度」のものです。1ドル120円として預金量80億円の銀行です。日本の場合、信用金庫(370企業)の預金総額平均は、約2,800億円、信用組合(258企業)の平均は約600億円。米国の金融機関は日本では見ることのできない微小企業(単店銀行=unit bank)なのです。
③米国の破綻処理のやり方は、「他の方法にくらべて費用が高くつくというので、91年には新法を作って、ペイオフはほぼ事実上採用しないとの方針」となっています。ヨーロッパ諸国にもペイオフ制度はありますが、ペイオフ騒動を聞くことはありません。米国以上に細心な預金保護が施されているからです。
その米国がなぜ、この時機に、社会不安をあおってまでペイオフ解禁を強要するのでしょうか。それは、米国自身の景気対策として日本のカネ(円)が必要だからです。地域銀行を半分につぶして、預金をドルの傘の下に組み込んでドルの信認強化を計る戦略なのです。
ペイオフは日本の国益を基本にその実施時期、内容が決められるべきです。
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