会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2002年04月発行 第95号 DDKだより
巻頭言:起死回生へ基盤の構築を
河野 先(株)第一経理 会長
全国中小企業家同友会全国協議会幹事長
今、日本経済は未曾有の危機的な状況下にあるが、政治経済の流れは、余程のことがない限り基本的には変わらないだろうと思う。
小泉内閣の「七大改革」も、「六大改革」(96年橋本内閣)、「日本経済再生への戦略」(99年小渕政権下の「経済戦略会議」答申)から引き継がれてきた、いわゆる日本の新自由主義改革(=構造改革)の政策路線を継承し推進する途上にあるからだ。
2001年から2003年度を集中調整期間とし、今後2~3年は低い成長率を甘受、不良債権問題の抜本的解決をはかり、構造改革を推進する7つのプログラムが進捗している。
その中味は民営化・規制緩和による競争原理の導入で(それは特殊法人や郵政事業の民営化、市町村の再編を通じて医療、介護、福祉、教育などの分野では地方を「自立」させる、“小さな政府”を標榜している)、日本国憲法の理念である国の役割を放棄し、「強い国家」として、民需主導による経済成長の実現を図ろうとしている。
この再生シナリオが実現すれば、躍動の10年になるとしているが、現在の大リストラ、「日本製アジア製品」の増加、地域金融機関つぶしは戦後最高の倒産件数と失業率となり、産業と地域の空洞化で特定の大手企業は栄えても日本経済の基盤である産業そのものが崩壊しかねない。
それだけに、傷を深くさせないために何としても抜本的な政策転換で流れをくいとめ変えることが大切だ。
EUにおける「中小企業憲章」採択は、多国籍企業化、金融市場等のグローバリゼイションに対して、国民経済の視点から中小企業の役割重視に政策シフトしたものだ。
圧倒的な国民と中小企業は日本で生計を営むわけだから、経営の基本を見失わず「耐える、踏んばる、切り拓く」気概で空洞化した地域経済の再生と活性化に向けた挑戦が求められる。加えて、食、住材の安全と環境問題は大切な課題であり、経済自給力の回復とアジアとの共生も重要である。
日本経済再生の真の担い手である中小企業として、座して待つのではなく、起死回生へ基盤の構築と技能等の財産を喪失しないよう守り継承していくことが大切だと思う。