会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2004年06月発行 第121号 DDKだより
金融・経営相談:「根抵当権の確定請求」の制度とは
Q.M銀行との借入取引を縮小したく、根抵当権の極度額減額を申し入れているのですが、なかなか応じてくれません。 担保提供者から銀行に対し、一方的に「根抵当権の確定請求できる制度」があると聞きましたが、その内容を教えてください。今月の相談員
伊藤 勝
中小企業診断士、中小企業組合士
A.根抵当権の確定請求とは、当初に確定期日を定めていない場合、銀行に担保提供した日から3年を経過した後に、担保提供者が銀行に対し元本の確定を請求することができるという制度です(民法398条の19)。そして、その請求の時より2週間を経過すれば、借入元本が特定され、その後極度額の減額請求が銀行に対して行えるというものです。 確定請求がされると、銀行の意思にかかわらずその根抵当権で担保されている債権は、絶対的に確定します。 確定とは、 種々の事由の発生(本件のような確定請求等)により、不特定の債務のうちの元本がその根抵当権の被担保債権として特定することです。 確定請求の2週間経過時点の元本が特定されることになり、その根抵当権は以後「特定された元本とそれに付随して発生する利息及び遅延損害金」だけを極度額の範囲内で、担保されるということになります。 本制度の特徴は、 根抵当権は、銀行との継続取引から発生して増減・変動する不特定の債権を担保するため、取引が継続する限りはその存続目的を有しています。 一方、担保提供者にとって、確定期日を定めない根抵当権の設定は、それが長期化すると所有不動産の不当な拘束を受けることになりかねません。そこで、担保提供者の地位を守るため、この制度を利用して元本確定後、極度額の減額請求や根抵当権の消滅請求により、所有不動産の交換価値または経済価値を充分活用させようとするものです。 確定後の極度額請求 例えば極度額2000万円の根抵当権がM銀行に設定されているとします。①先ず、確定請求により同根抵当権は確定し、被担保債権の元本が1000万円だったとしますと、その元本が特定されます(確定の登記をする)。②その後、担保提供者が極度額減額請求をすると、その時点における元本1000万円と利息・損害金2年分の額まで極度額(1300万円)が変更になり、700万円の空き枠を活用できることになります。