会報誌(DDKだより)

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2006年10月発行 第149号 DDKだより

巻頭言:文化が壊れはじめた日本

元顧問 岩井義照 



 最近不気味な事件が多発している。親が簡単に子供を殺す。子が理由もなく親を殺す。「殺人は快楽です」と法廷で述べる犯人がいる。官僚や銀行員の横領が多発する。間違いなく日本の文化が壊れはじめている。戦争に敗れ、経済恐慌で崩壊した国はない。しかし歴史を見れば、文化が崩壊した国は間違いなく崩壊に向かう。 
 
 日本の長期化する不況は国民の分裂をもたらし、若者の希望や展望を壊し、膨大なニートを生む。結婚しない青年たち、子供を育てられない夫婦を生み、日本を崩壊させる文化を生んでいる。 
 
 景気を回復させ、国家を再生させるのは小手先の政策ではない。人々が再び働く意欲を回復することである。各々が希望を語り、展望を示し、その熱意で人々が働くことである。働くことだけが人間を人間として回復させ、成長させる。ゲーテは「行動だけが人を救う」と説き、ロシアの文豪ゴーリキーは貧困の中、働き成長したことで、「仕事こそ私の大学だった」と述べている。 
 ただ残念だが、私には今の日本の社会がこうした文化を再生することは夢物語に思える。しかし、間違いなく救いはある。どんな不況や混乱が起きても、衣食住に密着している中小企業は生き残る。若者が働く場所はここにしかない。若者がこの労働を通して新しい文化を創る。新しい国を創る。私はそう信じている。