会報誌(DDKだより)

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2007年02月発行 第153号 DDKだより

巻頭言:中小企業とホワイトカラー・エグゼンプション

石田 仁


厚労相の諮問機関、労制審が答申したホワイトカラー・エグゼンプション(昨年12月27日)。日本語で、ある原則の「適用除外」を意味しています。労働基準法は、周知の通り勤務時間を、1週40時間、1日8時間以内と定め、これを超え、勤務させる場合には労使で協定し、2割5分増し以上の割増手当をつけなくてはならないと限定しています。しかし、時間で成果を計りにくい業務に携わり、収入が高く(財界は400万円、厚労省は900万円と言う)、自分の裁量で勤務時間を決定できるホワイトカラーは、この原則を除外してもよいというのです。実際、中小企業では経営者や管理職も含め、そんな社員は見当たりませんが、答申後の新聞では早期導入に大企業がこぞって手を挙げていました。
答申の狙いは、第1に、勤務時間と仕事の成果は必ずしも比例せず、時間ばかりかかる効率の悪い社員には残業代を支払わなくてもよいこと。次に、子育てや家族と過ごす時間を増やす「新しい勤務制度」を創出することにあります。前者については、中小・零細の立場から理解できなくもありません。しかし、社員を単に労働力とみるのではなく、「人」と見るのではなければ中小企業は立ち行きません。当該部署の給与制度を変更し(例えば評価制度の導入)、現行の変形労働時間や裁量労働制等を利用することで活路は見出せるはずです。「残業代ゼロ」制度では社員のモチベーションは喚起できないのです。中小企業の社員は残業代も含めた給料で生活しているからです。
後者では、なぜ、子育てや家族と過ごす時間が増え、働きやすくなるのか意味が不明です。むしろ、逆行でしょう。これでは、大企業に都合よく、「残業代ゼロ」制度を画策していると勘繰られても仕方がありません。今回は世論がこれを敏感に察知しました。
思うに、何でもかんでもアメリカのシステムを真似ることはありません。日本的経営の良さを今一度、見直し、労使で協力し独自な働き方を生み出すべきです。
参院選挙後にとんでもない法案が出されないよう監視が必要です。