会報誌(DDKだより)
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2007年05月発行 第156号 DDKだより
巻頭言:格差問題を考える
亀井 賢伍
いつの時代にも格差はあった、というのは間違いではありません。けれども、かつては“上見て励め、下見て暮らせ”の処世訓が違和感なく受け入れられました。努力すれば報われる、との訓示もあながち空虚ではありませんでした。切磋琢磨という言葉を少年時代よく聞かされました。互いに励ましあい共に向上する清々しい気風がありました。しかし昨今の競争至上社会における格差問題は明らかに様相が違います。
少数の富裕層とワーキングプアに象徴される貧困層の目に余る格差はさておき、ここでは以下の点について述べます。
一つは規制緩和による非正規雇用の拡大、社会保障・税制の改悪により貧困が拡がっていることです。もはや“等しからざるを憂える”段階ではありません。不公平を正す、の名目で、賃金、労働条件、社会保障が下へ下へと切り下げられています。正規雇用と非正規雇用、高齢者と現役サラリーマン、公務員と民間労働者が比べられ「低位平準化」に向かって「競争」させられています。
二つは機会の平等が絵空事になっていることです。機会の平等さえあればよし、とするものではありませんが、今や、格差、階層が固定化され、格差が成長の糧にならず、夢や希望が持てない人びとが増えています。個人の自己責任に帰することは酷で的外れです。
三つは、グローバリゼーション(地球規模化)の影響です。先ずは、アメリカの「内政干渉」です。派遣労働の拡大、医療制度改悪、などです。次いで、ソ連圏の崩壊、中国・インドなどの解放経済への移行です。「最底辺へ向かう競争」が国際的規模になりました。
最後に、貧困と格差の根底に、「人間の労働力を単なるコスト(費用)としかみない貧弱な思考=新自由主義」があることです。これを乗り越えるには「社会的連帯という豊かな、創造的な思考に裏打ちされた国民の運動」が必要です。