会報誌(DDKだより)

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2007年07月発行 第159号 DDKだより

巻頭言:トップが考え、行動し、育てる

岩井 義照


従業員にとって、最も大切な決めごとは、「報告、連絡、相談」、いわゆる“ホウレンソウ”と言われています。どの経営者も、従業員にこのことを厳しく命令します。しかし残念ですが、いくら厳しく言っても、実態はほとんどの従業員はこれを守りません。実際に行うのは連絡ぐらいです。

報告は自分の都合のよい報告はしますが、これもかなり作り替えて報告します。自分にとって不利な報告や会社にとって都合の悪いことは報告しません。相談にいたってはもっと酷い。本来、日本の会社では、部下が上司に相談などするわけがないのです。

相談とは迷ったときとか困難な問題のとき、要は判断ができないと考えたときに行うものです。しかし、相談したら上司に叱られるのです。「こんなこともわからんのか」とか、「なぜそんなことをしでかしたのか」、と。その上ほとんど上司も自分で決断できないものですから、必ず「きみはどう考えるのだ」と言う。答えられなければ馬鹿呼ばわりされ、適当に答えれば「まあ仕方ない。それでやれ」などの返事。要は誰もモノを考えないのです。

高度成長のもとでは方針はすべてトップが決め、従業員は考えず、批判をせず、ただ命令に従いもくもくと働く兵隊が必要だったのです。一握りのエリート集団さえいればよかったのです。こうした文化と常識が資本主義社会を支配しました。しかし、米・日を中心とした経済が爛熟、衰退し、モラルの退廃に落ち込んできた国が生き返るのは、人々が考え、自分の考えに基づいて働くしかありません。そのためにはまずトップが考え、行動し、部下を育てるのです。中小企業ならできます。これこそ中小企業の生きる道です。