会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2007年09月発行 第160号 DDKだより
金融・経営相談:中小企業の過剰債務を解消し、事業を再生させる「デット・デット・スワップ(DDS)」とは?
Q.当社は、やっと営業黒字を計上できる見通しがたってきましたが、バブル期以降の借入金過多状態が重荷になっており、このマイナスの資産を圧縮し安定した経営体質にするための抜本策が急務です。最近、企業再生の一手法「デット・デット・スワップ」ということばを耳にしました。
どんな仕組みか解説をお願いします。
今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝
A.
1.デット・デット・スワップ(Debt.Debt.Swap・・・略称DDS)とは
「デット」は借金、「スワップ」は交換・転換。中小企業の過剰債務の状態を解消し、財務の再構築により再建・再生を可能にするために、再生(経営改善)計画に基づき、債権者(メイン金融機関)が債務者に対して有する既存の貸付金の全部又は一部を「資本的劣後ローン(*①)」に転換するという再生支援策の一手法です。
2.DDS活用のメリット
既存の通常ローンから劣後ローン(一般借入金よりも返済順位が後回しとなる無担保借入金)に転換されるため、この劣後ローン部分は一定期間(再生計画実行により、通常ローンが完済となるまで)元本返済が猶予され、債務者の資金繰りが改善、企業再生に専念できるというメリットがあります。合わせて企業の信用状態が実質的に改善され、取引金融機関の残高維持、金利減免、返済期間の延長等協力が期待できます。
一方、金融機関にとっても、企業再生により貸出債権が健全化されるというメリットがあり、平成16年3月にDDSの第1号案件が商工中金により実行された以降、さまざまな地域金融機関により実施されています。
3.DDSを活用するための要件
「実現可能性の高い再生(経営改善)計画に基づき、本業の黒字(営業黒字)が確保され、再生・事業好転の見通しが合理的と認められること」と、「DDS実施金融機関との特別契約締結」が必須要件となっています。
なお、金融機関としては、計画を実現するにふさわしい専門能力を有する公的機関である「中小企業再生支援協議会(*②)」との連携を望んでいます。
4.DDSを活用するための手続きは?
メイン銀行に相談するか、前述の中小企業再生支援協議会に相談することになります。
経営権を失うことはありませんが、実施条件が厳しいので、事前に顧問の税理士等専門家の助言を受けることをお勧めします。
(*①)資本的劣後ローン
劣後ローンのうち、金融庁の「金融検査マニュアル(中小企業融資編)」に沿った要件を満たすもののことで、銀行の自己査定や金融検査等の債務者区分の判断において当該債務者の資本としてみなされる。このことにより、債務者の債務超過が減少し格付けがアップすることになる。
(*②)中小企業再生支援協議会
都道府県ごとに設置され、常駐する専門家が再生に関する相談を受け付け、助言や再生計画作りの支援、金融機関との調整などの支援をしている。中小企業診断士・公認会計士・税理士等で構成。当協議会は、平成15年に発足後平成19年3月末現在、全国累計で1万1千件を超える相談が持ち込まれています。