会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2007年12月発行 第163号 DDKだより

金融・経営相談:これからの中小企業の決算は「中小企業の会計に関する指針」を無視できない?

Q:銀行からの借入をするにあたり、「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストに税理士の署名を求められました。これはどのような制度なのでしょうか。そもそも「中小企業の会計に関する指針」とはなんですか。


今月の相談員
税理士 平石 共子


A:平成17年8月、日本税理士会連合会(以下「日税連」という)、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体から統一して、中小企業、特に会計参与が計算書類を作成するにあたり望ましいとする会計処理を示した「中小企業の会計に関する指針」が公表されました。
 中小企業向けの会計基準が必要という議論が各方面でされ、これに加え会社法で会計参与制度が導入されたことから、作成の基準が必要になってきたという経緯があります。
 会計指針は88項目に及びますが、あまり一般的でないものも含まれています。ここでは問題になりそうなところを紹介しておきましょう。

①減価償却は毎期継続
 減価償却は、経営状況により任意に行うことなく定率法、定額法その他の方法に従い、毎期継続して規則的な償却を行う。
② 貸倒損失・貸倒引当金
 回収不能な債権は貸倒処理し、取立て不能見込み額を貸倒引当金として計上しなければならない。
③賞与引当金
 翌期に従業員に対して支給する賞与の見込み額のうち、当期の負担に属する部分の金額は、賞与引当金として計上しなければならない。
④退職給付引当金  
 就業規則等の定めに基づく退職一時金などの退職給付制度を採用している会社にあっては、従業員との関係で法的債務を負っていることになるため、引当金の計上が必要となる。
 
 銀行から求められたチェックリストとは、税理士が全員加入している日税連が作成したもので、決算書について会計指針の適用状況の確認を税理士が行うものです。現在、全国の117もの金融機関でこのチェックリストを活用した無担保融資商品などの提供が行われているとのことです。
今のところ、チェックリストに従い確認をし、会社ができていない場合にはその理由を書くことになっていて、適用していないからといって融資が受けられないということにはなっていません。
 この会計指針は決して強制ではなく、「拠ることが望ましい」とし、努力目標として位置付けられています。しかし、自分の会社の決算書が会計指針に照らしてどのような水準にあるのかということは知っておいたほうが良いでしょう。