会報誌(DDKだより)

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2008年04月発行 第167号 DDKだより

巻頭言:この国の形がおかしい

河原 八洋


日銀総裁の空席が問題になっている。アメリカの金融バブルが崩壊しつつあるこの時期は確かに大変な事である。しかしながら少し冷静になって考えてみると、ちょっと前には事もあろうか、わが国のトップ、内閣総理大臣の席が空席だったことがあった。この時を思えばたいした事ではないのかも知れない。ここで本当にたいした事として考え直さねばならないのは、このような問題を次から次へと引き起こす政治家に国家の安全と運営を任せている国民の方なのかも知れない。 2月18日厚生労働省は、昨年の常用雇用者1人当たりの平均月収は33万300円で、前年を0.7%下回ったと発表した。戦後最長の景気回復といわれ(政府発表)、上場企業が軒並み最高益を上げているこの時期の話である。 富士通総研によれば、【00年から06年までの6年間比較してみると、大手企業の人件費は0.99倍だが、内部留保は4.3倍で株主配当は3.4倍】に増えている。  これを見ると史上最高益は、社員には分配されていない事がよく分かる。社員に分配されなければ、いくら最高益でもその利益は消費に廻らないから国内需要が増えない。だから安いものが顔を利かせて、デフレが続く。それでは大手企業はどこで稼いでいるかというと、輸出と下請けいじめなのだろう。 前者の言葉を借りると【GDPに占める輸出の割合が、80年代の貿易摩擦時を超えた】そうだ。経済政策が輸出偏重なのである。 それゆえ海外の投資家はサブプライムローンで日本の金融機関の関与が少ないにもかかわらず、日本株売りに出てしまうのではないだろうか。 極端な外需偏重が、給料を抑え、デフレ脱却を遅らせてもいる。 食料の自給率を見ても明らかなように、今こそ内需拡大に大きくハンドルを切らなければ、国の形がいびつになり国民の幸せは遠のくばかりだ。