会報誌(DDKだより)

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2008年09月発行 第172号 DDKだより

金融・経営相談:中小企業の新しい事業承継制度の活用はいかに

Q.中小企業の新しい事業承継制度ができたと聞きましたが、概要を教えてください。


今月の相談員
税理士 平石 共子


A.「中小企業経営承継円滑化法」が本年2月に国会で可決成立、この10月1日から施行となります。その内容は、1.相続税の納税猶予制度、2.遺留分に関する民法の特例、3.金融支援措置の3つの柱からなります。
1. 相続税の納税猶予制度
 事業承継の際に大きな障害となる相続税負担の対策として、非上場株式等に係る相続税の80%の納税猶予をするというものです。対象となるのは、中小企業基本法に定める中小企業で、次の適用要件をすべてクリアすることがポイントです。
① 被相続人が、会社の代表者であったこと。被相続人と同族関係者で50%超の株式を保有しかつ同族内で筆頭株主であった場合。
② 相続人が、会社の代表者であること。相続人と同族関係者で50%超の株式を保有しかつ同族内で筆頭株主となる場合。
③ 相続以後5年間事業を継続すること(具体的には、代表者であること、雇用の8割以上を維持、相続した対象株式の継続保有)
 納税猶予制度のスキームは決まっているのですが、相続税の課税方法を現行の遺産課税方式から遺産取得課税方式へ変更する内容がまだ決まっていないため、平成21年度税制改正で決定し、平成20年10月1日に遡って適用することになっています。
2. 遺留分に関する民法の特例
 遺留分とは、相続人(兄弟姉妹を除く)に保障される最低限度の相続の権利をいい、対象株式を遺留分から除いて事業後継者に集中させるのがこの特例の目的です。後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所定の手続きをすることが前提です。
① 生前贈与株式を遺留分の対象から除外
② 生前贈与株式の評価額をあらかじめ固定
3. 金融支援措置
 経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達を支援するために、経済産業大臣の認可を受けた中小企業者及びその代表者に対して、特例を設けています。株式、事業用資産の取得資金、信用力低下時の運転資金、相続税負担等の資金ニーズに対応するための資金の貸付措置です。1、2の項目と違って、親族及び、親族外の事業承継も対象としているのが特色です。