会報誌(DDKだより)

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2009年02月発行 第177号 DDKだより

巻頭言:中小企業に目を向けよ


亀井 賢伍

日本を代表するリーディング企業が、率先垂範して「非正規切り」を行い、名だたる企業が後を追っています。いずれもここ数年、利益をあげ、株主配当、役員報酬を増やしています。内部留保を厚くして不況抵抗力を格段に強めている企業です。

一方、中小企業は、体力が十分でないにもかかわらず、歯を食いしばって従業員を守っています。両者の違いはどこにあるのでしょうか。大企業は、仕事が増えればいつでもヒトを増やせるが、中小企業では、人の採用、育成は容易ではありません。極言すれば大企業では、非正規従業員の募集は部品や材料の仕入と同じ感覚のルーティン業務、中小企業にとっては、自社の存立成長に不可欠な貴重な人材(財)の確保という経営上の大事です。
経営者の道義、責任感もあるでしょうが、昨今のアメリカ型「略奪資本主義」(シュミット)のシステムに目を向ける必要があります。数年前、“経営者よ、首切りするなら、腹を切れ”と高言した財界のリーダーがいましたが,当の企業(後継者)が首切りの範を垂れたのは皮肉です。内部留保を活用できない背景には株式市場の「圧力」があったと見られます。過剰な懸念と一蹴できない現実があります。育てる株主は少数で、ヘッジファンドなど会社を商品とみる「売りぬく株主」が跋扈しているからです。労働と金融の規制緩和の結末です。いまこそ、アメリカ標準一辺倒から脱し、労働の規制,投機への制御を行い、実体に即した健全な資本主義に回帰すべきです。

中小企業は現に多数を雇用しているだけでなく、従業員を大事にし、育て続けざるをえません。環境変化に迅速に対応する必要に迫られ、進取の気風を身につけており、「社会進歩の源泉」(OECDの勧告)と評価されています。地域との共生は言うまでもありません。雇用の安定、地域活性化、持続可能な経済再生のため中小企業振興に力を注ぐときです。