会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2009年08月発行 第183号 DDKだより
金融・経営相談:破産手続廃止の決定があったことを翌事業年度に知った場合の貸倒損失の取扱
Q.取引先から3年前の決算直前に破産手続開始の通知があり、売掛金400万円の50%を個別引当金繰入れしました。その後何も通知がなかったのでそのままにしていたら、破産手続き開始から3ヵ月後に破産の廃止決定がされていたことがわかりました。貸倒損失はどのように処理したらよいのでしょうか。今月の相談員
税理士 平石 共子
A.破産の申し立てがあると裁判所は破産管財人を選任して、破産債権の届出書の提出を求めてきます。このケースでは売掛金400万円の届出をし、債権者集会の日時場所が通知書に記載されていましたが、なんと債権者集会のその場で破産廃止決定が行われていたということです。
財産よりも負債の方が多くて配当できないことが即、決まったということです。
弁護士名で破産の申し立てをする予定という通知や開始決定通知が来ても、その後まったく連絡がないということが見受けられます。
質問のケースも決算にあたってあまりにもおかしいということで破産管財人である弁護士に電話をしてわかったということです。破産管財人の電話番号は通知書に記載されているので、こちらから確認を取ることも必要です。
さて、いつの時点で貸倒損失になるかということですが、原則からいえば破産廃止決定がされたときになるのでしょうが、廃止決定を知った事業年度で貸倒損失とすることで問題はないと判断します。税法がなぜ貸倒の時期を重要視するかというと、いつでもいいとなると利益が出た決算の年に損失処理するといった利益操作が行われることを排除しようという考えからです。税務調査に供えて、質問を受けてもすぐ答えられるように、会社としての判断をした経緯などを記録として残しておくとよいでしょう。
なお、会計処理は次のようになります。
貸倒引当金 2,000,000 貸倒引当金戻入益 2,000,000
貸倒損失 3,809,524 売掛金 4,000,000
仮払消費税等 190,476
したがって、すでに個別貸倒引当金で200万円の損失は計上されていたので、今回損失となる金額は、3,809,524円から200万円を差引いた1,809,524円となります。
特に、消費税は売上の時に納めていることから、貸倒になったら控除することができるので注意が必要です。