会報誌(DDKだより)

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1997年02月発行 第33号 DDKだより

巻頭言:今求められる健康・安全な住まい

新協建設工業(株)常務取締役  富塚 孝      


 十数年前、うさぎ小屋と評された日本の住宅も最近は面積も増えてきました。一昨年の阪神大震災からは耐震が大きな問題になり、すべての住宅メーカー、工務店は地震に強いことをアピールしてきました。これからの住宅のキーワードは「耐久性、快適性、低価格、省エネルギー」です。このなかに大きくは取り上げられない問題があります。シックハウス問題です。新建材から出る化学物質がそこに住む人の健康を損なっているという問題です。
 新築家屋に入居して、頭痛、めまい、吐き気、倦怠感、不眠などなど、現代病といわれている症状が出ることがあります。これまでは、体質だとかアレルギーだとか、化学物質過敏症だとかで片付けられてきました。症状が出るかどうかは個人差がきわめて大きいために、その原因がわか
らないままになっていたのです。
 昨年の6月に発行された『住まいの複合汚染』※は、合板やビニールクロスなどの新建材類から出る化学物質が原因であると告発しています。これらにはホルムアルデヒドやサリンと同じような有機リン酸系の危険なものが多く、微量であってもその住宅に住み続けるかぎり影響を受けざるをえないと警告しています。著者はセラピストで、自ら新築マンションに入居して健康を害し、室内汚染問題に取り組むこととなった方です。テレビでも大きく取り上げられましたから、ご存じの方も多いでしょう。
 住宅建築に携わりながら、新建材からでている危険な化学物質のことを知らないまま仕事をしてきました。住宅は人間が健康で幸せに暮らすための不可欠の容器です。その住宅が健康を守るのではなくて健康をむしばむものになっていたというのです。
 これからの住宅は自然の材料を使って、健康を守る住宅でなければなりません。もともと、住宅の材料は木であり、土であり、漆喰でありというように自然のものを使っていたのです。そこに、塩化ビニールやポリエチレンなどという化学製品が安くて便利だということで採用されてきたわけです。安くて便利と、健康・安全とを交換していいのでしょうか。この問題に真っ正面から取り組んでいかなければと思っています。