会報誌(DDKだより)
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2010年04月発行 第191号 DDKだより
巻頭言:いま問われる経営者の責任
平石 共子
リーマン・ショックからもうすぐ1年半が経過する。アメリカ発の世界同時不況は一向に回復の兆しはない。2月の貿易黒字が前年同月比9.2倍になったと報じても、私たち中小企業の経営にとっては何も影響は感じられないといっていい。自社の景況感を示す景況判断指数は、1から3月期の予測調査では大企業全産業でマイナス2.4と2期連続マイナスであり、大企業も前よりも悪くなっているという回答のほうが多いということだ。
これに対する国の施策は、セーフティネット融資があり、また「景気対応緊急保証」制度がこの2月15日から開始している。もう一方で、昨年12月4日に施行された「金融円滑化法」は、法律の施行日から1月末までの貸し付け条件の変更実績が大手4行の合計で11,558件に達したと報じられた。特に1月に入ってからの件数が増えているところをみると一定に機能していることは確かである。
実際に、元金返済をストップした会社社長に話を聞くと、まずは1年の返済猶予を申し出たが半年ごとに申し出る手続きを強いられた金融機関もあったとのこと。信金の支店長からは、支店としては全面的に支援するつもりでいるが、融資審査部から経営改善計画が甘いという指摘を受けて、貸付金利や割引率を上げることをほのめかされたという。
これに対して、取引銀行に一律にお願いしているので一金融機関だけ条件を変えるわけにはいかないと対応したという。一筋縄ではいかないが、まったくシャットアウトというわけでもない。
条件変更を申し出た前述の社長はぎりぎりまで資金調達に奔走して返済猶予の申し出を決意した。もう少し早かったら会社にもう少し資金が確保できたかもしれない。
いま経営者に求められているのは、自社がどのような状況に置かれているのかを冷静に適格に見極めることではないかと思う。すばやい決断が求められている。しかも、新たな融資が出来てもあるいは返済猶予が実現しても、根本治療にはなりえない。この猶予期間を使って実現可能な方針をもつことだ。社員に方向を示すのは、経営者の最大の責任だ。