会報誌(DDKだより)

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2010年10月発行 第197号 DDKだより

巻頭言:避けて通れない後継者問題



平石 共子

一部上場の自動車部品メーカー、ユーシンという会社が新聞広告で社長を公募したことが話題になっている。すでに8月10日に締切り、選考に入っているらしい。現社長は76歳、他の役員も高齢化していて社内で後継者を育成する時間がないと判断、異例の行動に出たようだ。条件は、英語が堪能であること、行動力、思考力に優れグローバルな経営感覚の持ち主で、30代、40代を歓迎するというものだ。一体社員はどう思っているのだろうか聞いてみたいが、成り行きに注目したいと思う。
人材がそろっていると思われる一部上場の会社でさえ後継者問題は一大事である。中小企業も他山の石とは言っていられない。中小企業の社長の平均年齢は年々伸びていて、現在59歳くらいという。社長の退職平均年齢が70歳前後というデータが出ているので、平均的には10年後を目途に今から事業承継問題に着手して、遅くても10年後には退職するというイメージである。
事業承継というとすぐに後継者選びを思い浮かべてしまうが、事業承継の方法には3つある。
第1が親族への承継、第2が第3者(社員からの起用あるいは、外部からの起用)、第3がM&A(企業の合併買収のことを指すが、ここでは会社の譲渡が一般的に多い)がある。
早急に決めればいいというものでもない。まずは、会社自身の現状分析をする必要がある。会社の財産、負債、収益力、従業員、株主はどうなっているか。経営者自身の財産、負債、ライフプラン、家族はどうなのか。そして、今現在後継者はいるのか。
しかし、後継者がいるからと安心してもいられない。いざ引き継いで、うまくいかなかった例もたくさんあるからだ。
引き継ぐ前の後継者教育も重要で、綿密な計画と実行とチェックの繰り返しになる。
当社顧問先の某2代目社長は社員から社長になった方とばかり思っていた。これが何と前社長が見込んで、声をかけ会社に迎え入れ、社員として実績を作ってから社長に就任したという経緯をつい最近知った。会長は非常勤で残り、借入金の管理をしばらくは責任を持ってやっていくという役割分担だ。
後継者問題は避けて通れない。それぞれの会社にあったやり方があるが一歩を踏み出すことが重要だ。