会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2011年03月発行 第203号 DDKだより
人事・労務相談:「即戦力」社員を試用期間満了につき、本採用拒絶できるか?
Q. ベテランが退職したので即戦力と見込み、試用期間3ヶ月で社員を採用しました。特に業務遂行上の不都合がなければ本採用すると約束しましたが、普通の業務もおぼつかないので、今般、期間満了にあたり本採用の拒絶ができるでしょうか。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A. 試用期間中は社員にとっては大変不安定な状態が続きますが、3ヶ月すぎれば正社員になれるという期待もあります。他方、会社は多忙を理由に、3ヶ月後の使用期間満了までに結論を出せばいいと本採用の成否を先送りしています。その結果、事案のようなトラブルが発生します。
会社は試用期間中、本人の能力、適性、勤務態度等を観察し、正社員としてやっていけるかどうか判断します。その観点からふさわしくないと判断されれば、本採用を拒絶できます。これは正当な解雇理由があるかどうかの問題です。単に「ふさわしくない」と言うのではなく、「即戦力として高い給料で採用したのに初心者の仕事もおぼつかず、業務に支障が生じる」と言い切る説得力のある理由が必要です。ただし、実務的には試用期間中は解雇権が会社側に留保されているので、通常の解雇理由よりも少し幅が広いと考えられています(最判昭48.12.12)。他方、30日前に予告したかどうかの手続きが適正になされたかについても問われます(労基法第20条)。試用期間中の場合は、本採用を拒絶できるのは期間満了までと考えられがちですが、法的には期間の長短にかかわらず、入社して14日以内となっていることに注意しましょう(労基法第21条但書き)。それ以降の期間はすべて通常予告手続きが適用されると考えていいでしょう。
したがって、トラブルにならないためには14日以内に見極めてしまうか、2ヶ月程度の試用期間経過の際に正当な理由と1ヶ月前の予告を文書で明らかにし、試用期間満了をもって解雇する措置をとるべきです。雇い入れの段階で本人に対し何となく懸念があるならば、迷わず早めに決断することがポイントです。