会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2011年06月発行 第205号 DDKだより
巻頭言:命つなぎあえるエネルギー政策を求む
平石 共子
12時と同時にぱっと照明が消された。顧問先で打ち合わせ中のときである。ここでは昼休みの1時間一斉に照明を落とすことにしたという。3・11の震災以来、通勤で利用する池袋駅構内は薄暗い状態が続いている。公共の場でエスカレーターがストップしているところも多い。政府が発する「節電目標15%」に交通機関をはじめ、民間企業、家庭で自主的に取り組んでいる。東日本大震災がわれわれの意識を一変させた。
過去を振り返ると、第一次オイルショックのときは銀座のネオンが消え、テレビの深夜放送がなくなった。しかし、いつの間にか元に戻り、次にやってきたのがバブル崩壊によるコスト削減だった。このときは景気もどん底なら、会社の照明も暗かった。しかし、徐々にあいまいになり、次のテーマは地球温暖化を防ぐための約束をどうするかであった。
京都議定書では、日本は2008年から2012年までに1990年と比べて温室効果ガスを6%減らす目標。ところが、実際は1990年よりも増えている。
クールビズやエアコン設定温度28度は馴染んできた。エコポイントでテレビ、冷蔵庫、エアコン、車は省エネへ歩を進めた。しかし、本気で減らす気があったのかは疑問である。
地震、津波、原発という未曾有の災害を経験し、どっぷりと電気に依存していたことに気づかされた。
そして、今ほど原子力発電のことが語られたことはないだろう。世界を見渡すとそれぞれの国が自国の判断を下してきたことがわかった。
たとえばドイツは元々2023年までに段階的に原子力発電を廃止することを決定していた。ところが今年1月原発擁護派の巻き返しで廃止時期を14年間延長する法改正が決まった。しかし、福島第一原発事故でメルケル首相は改正新法を3ヶ月凍結、17基ある原子炉のうち古いものから8基の稼動中止を決めたということだ。しかも、自然エネルギーへの転換により10年間で20万人の雇用を生んだという。
日本は自然エネルギーの技術輸出国なのに、国内ではその技術はあまり使われていない。節電にも限界がある。日本のエネルギーをどうするか、決断するのは政治の責任だ。