会報誌(DDKだより)

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2011年09月発行 第208号 DDKだより

金融・経営相談:未払いの期末賞与を損金にするには厳格な要件がある

Q. 当社は賞与を7月と12月に支給する規定になっていますが、売上が急激に減ったため夏の賞与は大幅にカットしました。9月決算を迎えるにあたり予定より利益が出そうなので期末賞与として少しでも支給したいと考えていますが、支払いは10月になりそうです。賞与が未払いでも、税務上の損金として認められるのでしょうか。

今月の相談員
税理士 平石 共子

A. 期末賞与というと景気がいい話に聞こえますが、賞与が規定通りに払えず年度末の状況を見て期末賞与を支給するという会社が増えているようです。
本来、使用人に対する賞与はその事業年度の期間に対応して損金になるものです。しかし、未払いの使用人賞与をその事業年度の損金にするには、厳格な要件が定められているので注意が必要です。要件は、次の3つです。
①すべての使用人へ支給額を通知すること
②通知をしたすべての使用人に対して事業年度終了日の翌日から1ヶ月以内に通知金額を支払っていること
③会社の計算で損金経理をしていること
この3つの要件のすべてを満たすことになっています。
①の支給額の通知は、具体的には「総支給額」たとえば20万円とか具体的な金額、あるいは「基本給×支給月数」たとえば15万円×1ヶ月等をメールや書面で各人ごとに通知するという意味です。源泉所得税や社会保険料の計算をするなどのいわゆる「給与明細」までは要求していません。メールや書面の現物控えは保存しておく必要があります。さらに、社員から通知を受けた確認印などをもらっておくなど、通知した事実を証明するものを用意しておくとよいでしょう。
②の1ヶ月以内に支払うことは絶対要件ですが、もう一つ通知した人すべてに支払うことが要件になっています。めったにないことでしょうが、1ヶ月以内に退職した人で支給日に在職していなくても支給しなければアウトです。
③は会社の決算で賞与の未払い計上をすることですので問題はありません。
この3つの要件を満たさないとどうなるかというと、この決算では損金と認められず、支払った事業年度の損金になってしまうということです。
なお、賞与に対する社会保険料の会社負担分は支給額の12%前後になりますが、社会保険料の損金算入時期は、賞与を支給した日の属する月の月末となっているので、注意が必要です。
この規定は以前からあったのですが、最近の税務調査でチェック項目の一つになっているようなので、厳密に要件を整えるようにしてください。