会報誌(DDKだより)

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2012年03月発行 第214号 DDKだより

金融・経営相談:国が活用をすすめる「資本性借入金」とは

Q. 円高による採算悪化から、債務超過に陥っています。そのため、銀行から新規融資を受けることが困難な状態です。最近金融庁が、私どものような企業を対象にした「資本性借入金」の積極的な活用をPRしているという話を聞きましたが、どのような借入金でしょうか。


今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝

A. 今般の急激な円高の進行により財務内容が悪化している企業や震災の復興過程で事業を再開・継続する企業を対象に、金融庁では昨年11月、金融機関に対し、資本不足に直面しているものの、将来性があり、経営改善見通しがある企業には「資本性借入金」の積極的な活用を検討するよう要請を行っています。金融庁ではこの借入金の活用を促進することで、資金不足に直面している企業の資金繰り支援につながり、経営改善にもつながるとしています。
「資本性借入金」とは、償還期間が長期に亘るなど、貸出条件が資本に準じた借入金のことで、金融検査上、「借入金」であっても「自己資本」とみなして取扱うことができます。
例えば、採算性が悪化し債務超過となり資本が毀損している企業が、既存の借入金が「資本性借入金」にシフトされ資本とみなされれば、負債が資産を上回っている「債務超過」の状態から、資産が負債を上回る状態となり、「債務超過が解消」されることになります。このように、バランスシートの改善が図られる結果、金融機関による債務者の格付けがアップし、新規融資を受けやすくなる効果が期待されます。
もう一つのメリットは、資金繰りが改善されることです。
長期の「期限一括償還」が基本のため、月々の返済が不要となり、資金繰りが楽になります。又、業績連動型の金利設定が基本のため、業績悪化時は金利が低くなります。

金融機関からの「借入金」が「資本性借入金(資本的性質が認められる借入金)」とみなされる場合の貸出3条件[*]
貸出条件面で、資本に準じた性質が確保されていることが必要で、基本的には、①長期間償還不要な「償還条件」設定、②業績連動型の「金利」設定、③法的破綻時の「劣後性」が判断基準となります。因みに資本性借入金に類似する既存融資として、日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」や商工中金等の「危機対応業務による資本性劣後ローン」があります。 
[*]
(1) 償還条件:資本に準じて、原則として「長期間償還不要」であることが必要で、契約時の償還期間は5年超の一括償還が原則。
(2) 金利設定:原則として「配当可能利益に応じた業績連動型の設定」となり、赤字の場合は、利子負担がほとんど生じないこととなります。
(3) 法的破綻時の劣後性:原則として、法的破綻時(法的倒産手続き開始決定が裁判所によってなされた場合等)には、すべての債務に劣後する(金融機関としては、他の債権に先んじて回収しない)扱いとなります。