会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2012年06月発行 第217号 DDKだより

巻頭言:働くことが楽しい社会か



石田 仁

いつの間にか失業率は4%台が当たり前。大学を出たからと言って就職は簡単ではない。20代の失業率は10%を超え深刻な社会問題になっている。
昨年、薦められて、都の障害者雇用支援協議会委員に就いた。委員になったと言っても、内心は「障害者雇用が必要なことは分かっているけど、会社に雇用する余裕がないのでは」、「受け入れると専属の人手が必要になり、作業効率が落ちてしまうのでは」という思いもあった。
ところが、今年の1月、実際に障害者が働く現場を見学し、考え方が一変した。新宿区下落合にある「三越伊勢丹ソレイユ」である。社員51人中障害者28人。そのうち知的障害者27名。障害者の能力を活用し、三越伊勢丹の業務向上を図ることを目的とした特例会社である。店頭で使用される贈答用の箱作りやリボン付け、伝票の分類等を主として請負っている。担う業務は販売員が接客時間を割いてしていた仕事。ソレイユに発注することで、販売員は本来業務に専念でき、残業も減少。飛躍的に業績も向上していると言う。そんな彼らの仕事振りを見せてもらった。製造年月、賞味期限シールへの日付押印。寸分違わず枠の真ん中に押されていく。ギフト用リボン作りの前工程、リボンの先端がジャスト45度に切れていないものをはじき、その先端を45度の線引きマークに合わせ、カット。実に正確である。クレジットの伝票をクレジット会社毎に分類する。不可能だと思っていたが、見事、間違えずに分類できてしまう。単純な包装紙の折作業。全てで80種類以上の業務をひたすら黙々とこなす。この持続性と正確性が彼らの特徴、自分を活かすことなのである。指導員が助言する場面もあるが、朝から颯爽と仕事に専念しているのを見たら「え!」と思わず驚いた。親が大企業だから、余裕のある会社だからとも言えるが、実に働くことが喜びとなっている姿をみると、私たちがいい加減な働き方をしているのに気付かされる。子を就労させる前の母心、「この子が一般の会社で働くなんて無理」は見事に破られたそうだ。
語るより先に感じること。やはり現場は見なくてはならない。