会報誌(DDKだより)

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2012年09月発行 第220号 DDKだより

巻頭言:自営業者の命懸けの飛躍



石田 仁


最近、イオンが朝7時から夜11時まであけているので、好調コンビニだっておちおちしていられない。自営業者や零細企業には大変受難の時代。儲け続け、生き続けるのがとても難しい。ビジネスに成功するかどうかは、人、物、金、情報と言われたが、それでも足りず「命懸けの飛躍」に依拠している。報道によれば、ここ30年で自営業者は950万人から564万人と4割減ったそうだ(日経、8月22日)。とんでもない激戦区。ところが、まだまだ介護や福祉、生活関連サービスには旺盛な需要がある。だから個人の開業を支援する金融面の施策は当然必要である。だが、もっと根本的に経営を支援するソフト面の手助けがなくてはならない。情報を駆使して戦略を立案、数値で経営を計画し、資金繰りを立てる。こういった本来の経営の王道に立ち返らねば自営業者に明日はこない。 
最近取材した兵庫県加西市の讃岐うどん店、G製麺所は、この受難の時代に、もがき生まれたうどん屋である。製麺所方式のうどん店は讃岐には多いが、播州にはほとんどない。本当の本物の美味しい讃岐うどんを食べさせたいと讃岐の「るみばあちゃん」の一番弟子になって修行。23歳の時、無一文ながら実家の隣で開業にこぎつけた。田んぼの真ん中で食べるうどんはこしがあって“ぷりん”として美味しい。天麩羅も大きく、さくさく。だからお客が引きも切らない。それでも社長や従業員の豊かな暮らしには程遠い。何とか食えているにすぎない。
どう変えるか。いかに売上を増やすかを死に物狂いで考え、計画・実践するしか道はない。幸い、うどんの移動販売(大学や地域への出張教室、販売)がかなりの成長分野と分かり、店舗売上との両面で攻めることで飛躍的に売上が伸ばせることがわかった。もちろん、私はほんの少し相談にのっただけである。
こんな時代だからこそ、東京にある効率化をきわめた大量消費型の讃岐うどん店にはない独自の道を探って欲しいと願う。