会報誌(DDKだより)

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2013年02月発行 第225号 DDKだより

巻頭言:やってみないとわからない


石田 仁

13兆円の緊急経済対策ができたから、すぐにデフレを脱却し、景気回復するとは誰も思っていません。しかし、私達中小企業にとって、景気回復は、会社の存続発展の礎になるものです。同時に、各企業では、現場からの直観力と人を活かす、創意工夫に満ちた経営の積み重ねが肝であることも知っています。
 新春早々、宅急便誕生の記事が掲載されていたので紹介します(日経朝刊1/6)。76年、当時大和運輸(現ヤマト運輸㈱)は三越中心の運送業者。それが不特定多数の個人を相手に戸口から戸口へのビジネスを始めることになる。小倉社長以外、全役員が反対。それでも、この宅急便は10人の若手社員の手で「荷物は3辺合計1m、重さ10㎏以内、料金500円、翌日配達」として商品化されるや全国を駆け巡った。今や、社会のインフラである。彼の著書によればエンパイアステートビルから眺めたマンハッタンの十字路で、同時に4台の運搬車が、それぞれの地域を決め、集配しているのを見て、個人の集配ビジネスが成立すると直感したそうだ。宅急便は小倉氏がニューヨークの物流現場を見なかったら生まれなかったかもしれない。
 「現実は今も動いている。過去の経験に照らして語ることがある一方で、動き続ける今を追い続ける努力をしない限り、視聴者には生きたニュースは伝わらない。だから私は現場に行く。そこで触れた多くの人びとのことばは、私の魂を揺さぶり、心の中へしみわたっていく。今度はそれが、私自身の内面からにじみ出る何かとなり、私の発することばに命を吹き込んでくれる」とNHKキャスターの大越氏はその著書で語る。徹底的な現場主義を貫き、語るより先に感じることを優先させています。彼にとっての現在は「現場」です。だから、大事件のとき、テレビから消えてしまうことがある。経営の神様はもっと徹底しています。目の前の白い粉が、砂糖か塩か議論するくらいなら、「なめてみなはれ」と。これは、現場が肝心との考えにも通じることですが、とにかく考え、悩むより、実行してみればわかることを意味している。
 やってみればわかる。この当然のことが人や組織・企業経営の原動力とならなければ、この国の人の暮らしや企業に未来はない。
 年初にあたり、この気持ちを持ち続けたいと思う。本年もどうぞよろしくお願いいたします。