会報誌(DDKだより)

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2013年02月発行 第225号 DDKだより

人事・労務相談:研修の延長時間に割増手当は必要か

Q.当社は、社員研修の際、定時に終わらない場合があります。その延長した時間分につき、時間外割増手当をつけなくてはいけませんか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A. 所定勤務時間内に終了すればいつもの定時終業となり問題は発生しません。しかし、研修の延長は、会社の暗黙の了解で遂行されるものであり、社員は簡単に拒絶できません。法的にも実体的にも仕事の延長であり、残業となるものです。実働が8時間を超えれば、会社は社員に時間外割増手当の支払義務が発生します(労基法第32,36,37条、昭和26.1.20 基収2875号)。
 原則として、通常業務なら時間外手当もやむを得ないところですが、本来の業務とは異なる研修です。費用対効果の観点からどこまで給与を保障したらよいのか迷うのも理解できます。
 そこで、就業規則等に特別の定めがあれば、仕事の場所や質の違いから別の考え方も可能です。一つは、研修の延長も含め時間外労働は社内に限らず、外部で実施される場合もあり、業務の性質上やむを得ない部署もあります。そこで、事業場外労働や裁量労働として勤務時間が延長されても「通常の勤務をしたとみなす」等(労基法第38条の2,38条の3)の定めとして労使協定があれば、必ずしも割増手当は発生しません。もう一つ、通達は法内残業(たとえば7時間勤務の際の1時間延長の場合)に該当する場合、その延長部分の給与につき、就業規則や労働協約等の別段の定めがあれば、その定めに従った給与でも可能としています(昭和23.11.4 基発1592号)。類推解釈から、8時間を超える場合でも基本的時給部分を研修の場合に限って、減額することも可能でしょう。前者と比べれば後者で処理する方が会社のコストは大きくても社員満足には一歩近づくと言えます。私は、こういうケースが頻繁でなく、社員との合意が得られれば、本来の時給相当部分プラス割増手当より金額が小さくても定額の会議手当や研修手当でまかなった方がベターではないかと考えます。