会報誌(DDKだより)

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2013年09月発行 第232号 DDKだより

金融・経営相談:賞与引当金、退職給付引当金は自社の実情から合理的に計算することがポイント

Q. 中小企業のための新しい会計ルール「中小企業の会計に関する基本要領」(以下中小基本要領という)に基づく決算をしようと思いますが、賞与引当金と退職給付引当金は現在まったく計上していません。今年度から計上したいと思うのですが、具体的にどうすればいいのでしょうか。

今月の相談員
税理士 平石 共子

A.中小基本要領は、昨年2月に金融庁及び中小企業庁が事務局となり専門家による検討会ワーキンググループが策定したものです。中小企業の実務で必要なものに絞って、簡潔な会計処理等を示しているといって関係各所で普及活用が進められているところです。保証協会がこの中小基本要領に基づいた決算をすれば保証料を0.1%割引するというのもこの一環といえます。
 引当金は未払金等の確定した債務ではないものの、次の4つの要件を満たす場合には、財政状態を適正に表示するために負債に計上が必要で合理的に見積もって計上することとしています。4つの要件とは、?将来の特定の費用又は損失であること、?発生が当期以前の事象に起因すること、?発生の可能性が高いこと、?金額を合理的に見積もることができることです。
 かつては計上していた会社でも、税制改正で法人税の損金にならなくなってから、この2つの引当金をやめてしまったケースも多く見受けられます。将来必ず発生するのであれば、毎期の利益から計上しておく必要があるのは言うまでもありません。まずは、引当金として計上する金額を算定して利益計画を立てることから始めるとよいでしょう。

 賞与引当金は、翌期に従業員に支給する賞与の額を見積もって、当期の負担と考えられる金額を引当金として計上します。たとえば、3月決算の場合、翌期の7月と12月に支給する賞与の額を見積もり、12分の3を当期の負担として計上します。翌期の見積もりが難しければ、前1年間の支給実績をもとに計算することでもかまいません。

 退職給付引当金は、決算時点で従業員全員が自己都合によって退職した場合に必要となる退職金の総額を基礎として、一定割合を退職給付引当金として計上します。従業員の年齢構成、退職率をもとに算定します。かつて税法基準は40%を限度としていましたが、従業員の平均年齢が低ければ、10%あるいは20%もあり得ます。毎期少しずつ増やしていくこともできるので、とにかく引当金の計上を始めることが重要です。
 なお、やむをえず赤字となる場合は税理士など専門家と相談の上、判断してください。