会報誌(DDKだより)

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2013年10月発行 第233号 DDKだより

巻頭言:替わるものを探す仕事


石田 仁

リーマンショック後、静岡県三ケ日の授産施設では自動車部品の仕事がすっかりなくなり働き手の知的障害者への給与が4割カットされたそうだ(9月10日、NHK総合おはよう日本)。新たに注目されたのが、耕作放棄地のみかん畑だ。高齢化で人手が入らず、荒れ放題であるけれども、毎年夏には青いみかんが実る。そのまま食べる商品としては無理だが、正真正銘のご当地青島みかん。これを使い何か商品化できないのか授産施設に相談があったそうだ。畑を清掃し、収穫する軽作業は、障害者ができる。実をどうするか。民間の食品会社に持ちかけ、加工し、調合を工夫した結果、匂いや酸度の関係でポン酢に向いていることになり、商品化にこぎつけた。委託工場で製造するが、施設では青い実を収穫し、工場に送り、瓶詰となった製品にラベルを貼り、包装し、出荷している。今では道の駅や各所で販売され、障害者にはこれまで以上の給与が払えるようになったと言う。こんなケースは稀だが、農家は畑が維持され、授産施設は仕事が確保できた。買ってくれたお客さんも喜ぶ。施設は収益性を目的とするものではないが、障害者に何がしかの対価を支払おうと思えば、事業性が求められる。
 このように経済至上主義一辺倒でなく、何とか皆が安心して暮せる持続可能な社会を作り出そうといろいろな試みがなされている。かつて人間が手に入れてきた休眠資産を再利用することで、経済再生、コミュニティーの復活を果たす「里山資本主義」(藻谷浩介、NHK広島取材班著、角川書店)と称される考えもその一つと思う。
 見解の相違はあるが、全原発が止まっていることを考えれば、火力も含めた代替エネルギーで足りていると考えることもできる。問題はあるし、きちんと解決できてはいないが、世の中かなり前進しているのではないかと思う。
 経営にとって、食わせてくれる事業は少しずつ衰退していく。だから、新しい替わりの仕事を探し出し、育てる。これを繰り返し続けていくことが仕事。中小企業だって同じ。私たちDDKも含め、もっと真摯に好奇心を持ちたい。