会報誌(DDKだより)

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2014年05月発行 第240号 DDKだより

巻頭言:中小企業における時代認識


河原 八洋

昨年、東日本大震災の被災地宮城で、大活躍している若い経営者に会った。白石市で自動車の修理工場を経営している佐藤全さんだ。
 佐藤さんは2代目社長だが、普通の親子承継とは違う。多角経営のお父さんの会社に呼び寄せられたが、途中で関連を持ちながら飛び出して独立してしまう。自動車の修理に特化した事業に専念して、お客様から要望されれば、部品まで造ってしまうほど熱を入れて取り組んできた。佐藤さんは技術屋ではなく事務系で、広告代理店でラジオでのコマーシャルを制作していた。業界では天才と呼ばれたこともあったという。この佐藤さんの最初のヒット作はLEDを使ったバス側面に付く、巻き込み防止用の『路肩灯』である。日本初のLED使用という事もあり、全国で4割のシェアーを持った。
 東日本大震災の復興計画の過程で、自動車を改造した移動図書館の構想が持ち上がったが、メーカーはどこも手を上げなかった。台数が少ないからだ。そこで佐藤さんの所へ話が来て引き受けた。バス車両を改造して『移動図書館車』として造り上げて、避難所生活をしている被災者に喜ばれた。それを契機に事業分野の開拓の力を注ぎ、今では、新千歳空港にリムジンバスまで納品するまでに成り、すっかりバス製造メーカーに変身を遂げた。
 昔の日野自動車やいすゞだと引き受けたと思うが、現在はトヨタの傘下に入り、合併を繰り返し売り上げが1兆3千億円もの巨体に成ると小回りが利かず、そこまで手が出ないのだ。
日本の大企業が世界と戦うために巨大化して、世界各地に出て行った事で、国内にたくさんの隙間を作っている。すなわち大企業の巨大化と海外進出は、中小企業の活躍の場を広げていると言う事だ。(6月18日同友会で話してもらう)
 今後さらに中小企業の役割が大きくなってくると思う。中国の労働関係研究所の所長の常さんは『仕事の要求は厳しくとも社員を大切にする日本の中小企業の家族的経営は、社会に安定をもたらし、それを基礎として日本は力を付け、国家も国民も豊かに成った。今の中国には欠けているものです』と話している。自信を持って中小企業の輪を広げて行きたい。(この4月より東京同友会の代表理事を三宅さん、浜野さんと就く事に成りました。皆様どうぞよろしくお願いします)