会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2014年08月発行 第243号 DDKだより
金融・経営相談:法人税の税率引下げの財源を中小企業の課税強化に求めるとは
Q.まだ決まったわけではないようですが、法人税の税率を引下げる一方で、中小企業への課税強化が検討されていると聞きました。具体的には中小企業にどのような課税強化が検討されているのでしょうか。今月の相談員
税理士 平石 共子
A.安倍内閣は、この6月に「骨太の方針2014」を閣議決定し、「数年で法人実効税率を20%台まで引下げることを目指し、来年度から開始。財源については、課税ベースの拡大等による恒久財源を確保することとし、年末に向けて議論を進め、具体案を得る」と発表しています。呼応して政府税制調査会(首相の諮問機関)は、「法人税の改革について」を公表し、改革の目的は「第1に、法人税率の引下げ、第2は、法人税の負担構造を改革することである」といっています。
税金の計算は、「税金の対象となる課税所得金額(課税ベース)」に「税率」をかけて計算します。課税ベースと税率で決まるわけですから、法人税率を下げれば減税になり、課税ベースを拡大すれば増税になります。法人税の負担構造を改革するという意味は、赤字でも課税、中小企業の税負担を増やして財源を確保することを打ち出しているのです。
中でも一番の打撃となるのは、法人事業税の外形標準課税を資本金1億円以下の法人(中小法人)にも適用することです。外形標準課税とは、法人の所得ではなく法人の事業規模に対して、資本金額や給与支払総額、支払利息、賃借料などに課税する仕組みなので、赤字でも課税となります。このほかにも、中小法人には年800万円以下の所得に対して15%の軽減税率を適用しているのを廃止するとか、中小法人にも繰越欠損金の控除額に制限を加える(現在資本金1億円超の法人は、所得金額の80%の控除に制限)が挙げられています。
これから年末に向けて議論が始まります。まずは現行の外形標準課税の仕組みを理解して、自社の税負担を計算してみることです。よほどの大赤字でなければ即増税、従業員数が多いところほど税負担が多くなるはずです。日本商工会議所をはじめ中小企業4団体は「赤字法人175万社への影響甚大」と断固反対の表明をしています。関心を持ち、反対の請願署名をすることで国会に反対の声をとどけましょう。