会報誌(DDKだより)

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2014年11月発行 第246号 DDKだより

人事労務相談:事務労働にみなし時間制は適用されるのか

Q.事務労働を個々人の裁量ですすめる労働とみなせば、所定労働時間を超えても時間外労働とみなさなくてもよいのでしょうか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.裁量労働は業務の性質上、その手段、方法、時間配分等を社員に任せる業務をいいます。
 ほとんど個人やチームに委ねた方が効率的な仕事で、逐一上司の指示があるわけではありません。この裁量労働は、専門的なものと企画的なものに区別され、該当業務は法律で定められ、これ等の業務については労働時間の算定方法につき、みなし労働時間制が認められています。例えば、所定労働時間を8時間とした場合、時間外労働も含めてその業務に「通常必要とされる時間」(みなし時間)を8時間とするか10時間にするかは労使協定や労使委員会の決議で定めることになっています。10時間みなしならば2時間は時間外労働を計算しなければなりません(労基法第38 条の 3、第38条の4)。専門業務については、特定の専門知識、技術を要するプロデューサー、弁護士、公認会計士等国が指定しています。
 他方、ご質問に関係する、企画裁量業務が認められるには、労使委員会の5分の4以上の賛成決議と監督署への届け出が必要です。当初、大企業を想定した本社の企画、立案、調査、分析の業務とされていましたが、現在は中小企業も含め、事業運営上の重要な決定が行われる事業場の業務まで枠が拡げられています。具体的な基準として、?業務が所属する事業場の事業の運営に関すること、?企画、立案、調査、分析の業務であること、?業務遂行の方法を大幅に労働者に委ねることが客観的に判断される業務であること、?企画、立案、調査、分析の相互関連作業の遂行につき、広範な裁量が労働者に認められていること等4つの縛りがあります。しかも、実施する場合は、適用労働者の同意が必要です。
 ご質問の「事務労働」とは、まさに、この企画業務型の裁量労働に関してのことだと思います。単純な業務に従事する人はその対象からは外れます。また、適用対象業務であったとしても、時間外手当が不要ということではありません。時間外手当の計算が容易なみなし労働時間制を一定の条件の下に採用しているにすぎないからです。
 今、この規制が緩和されようとしていますが、現段階では、一般の事務職に対して裁量労働を適用できる余地は極めて狭いと考えて下さい。