会報誌(DDKだより)

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2015年08月発行 第255号 DDKだより

巻頭:行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず

 ’方丈記’の書き出しは実に趣きがあって奥が深い。

 さきの大戦後の荒廃から先人・先輩方々の必死の努力のもとに復興し、その後の輸出による高度経済成長をテコに、経済大国としてアジアの盟主に到達した日本ではあるが、今では、その主座を中国に譲り渡すこととなった。
 かつて、産業革命による殖産興業で得た莫大な富を背景に、植民地政策で’7つの海’を支配し、世界の盟主となった’大英帝国’が、第一次大戦後のオイルラッシュで台頭してきた米国に、その座を明け渡したことと重なって見えるのは、単なる歴史の偶然だろうか。

 お互い四方を海に囲まれた小国、外に活路を見出すのは至極当然のことながら、いざそのノウハウを大国に学ばれてしまえば、圧倒的な国力の前にはなすすべがないのである。
 そののち、かの国は’英国病’に陥り長きの低迷時期を経験し、わが国はバブル後の失われた20年からいまだ脱却できないでいる。

 歴史を鑑みるに栄枯盛衰は必定である。それは中国を見てみるととても良く解る、まさに激動の180年。アジアの大国’大清国’は、欧州から仕掛けられたアヘン・アロー戦争で敗戦、日清戦争では、まさかの当時隣国の小国にまで敗け、領土の一部は列強に占領分割統治されることとなり、のちの革命により国家滅亡。第2次大戦の終了まで、独立国家としての尊厳が回復できなかった。新国家建国、文革の終焉で改革開放、ソ連・旧東欧の次々の崩壊をよそに、独自の資本主義的共産主義を貫き、外資導入が実を結びここ15年の急成長、ついに世界各国が認識するアジアの大国に返り咲いた。
 その、屈辱のどん底から這い上がり成功した大いなる自信こそが、米国に対抗して’AIIB’を創設して盟主たらんとしたり、隣接する諸外国との領土問題などで新たな軋轢を生んでいる遠因なのであろう。これもまた歴史のなせる’業’なのかもしれない。

 NHK大河ドラマは、歴史認識を踏まえて、フィクションを加え、世相を反映させながら制作しているという。
 先人たちが命がけで築き上げたこの国、その歩んできた道程を歴史というファインダーを通して深く知り、こののちも’世界から信頼され期待される国’であり続けられるよう願うばかりである。