会報誌(DDKだより)

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2016年02月発行 第261号 DDKだより

巻頭:「懐かしい歌声喫茶」から


大野 幸則

歌声喫茶が「国民的ブーム」と言われたのが今から約60年前のことでした。お幾つ位でしたでしょうか。「歌声喫茶の灯が消えて」と報道され40年、再び歌声喫茶が注目され始め、かれこれ20年になります。メディアでも度々取り上げていただけるようになりました。ある局の方に「どうしてそんなに取り上げてくれるのですか」と伺ったところ、「明るいニュースが少ないので、ここに来てしまうのですよ」とのお返事。嬉しいやら、世の中のことを考えると少しつらい気持ちになりました。再ブームは、「懐かしさ」とか「昭和レトロ」の流れの始まり頃でした。経済誌の調査で銭湯、歌声喫茶、駄菓子屋、ジャズ喫茶が思い浮かぶという調査も発表され、「昭和」がトレンドとされていました。
 歌声喫茶ともしびは、今では新宿に一軒だけとなってしまいました。店舗は増えてはいないのですが、「出前歌声喫茶」の要望が増え、毎年200日程、それこそ北海道から沖縄までよんでいただけるようになりました。
 団塊の世代の定年退職が始まった頃であり、個人責任が強調される時代でもありました。「懐かしい」という気持ちから、一緒に歌うことの楽しさを感じられ、歌の一つ一つに人生を重ねあわせ、これからを生きようとする願いが重ねられるようになりました。「生き合い歌い合う歌声喫茶」という新しい文化の形が生まれてきたと感じています。特に、東日本大震災以後それは顕著に感じられます。
 更に最近の特徴は、地域で歌声喫茶をやっていこうという方達が増えてきていることです。退職した先生にピアノを弾いてもらう、若い頃バンドをやっていた人がギターを持ち出し、労働組合でアコーディオンを習ったことがあるという方が物置から引っ張り出し、みんなで伴奏し歌い、楽しく運営する歌声喫茶が、地域のたまり場になりつつあります。
 昨年11月に、NHK Eテレ「団塊スタイル」で、「歌って心も体も若返る」と、私どものともしびを含めて<元気になる歌の力>の様々が紹介されました。直後に朝日新聞のReライフ版で、歌をランクアップ、人生充実「うたおう響かせよう」<みんなで楽しむ>講座風の特集となり、楽しく歌う姿が紹介されました。
 うたごえ喫茶が今や「生き甲斐」となりつつあります。「懐かしい」から「生き合う力」、そして「生き甲斐」へと人々の生活の中に根ざし始めた歌声喫茶を感じています。