会報誌(DDKだより)

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2016年07月発行 第266号 DDKだより

巻頭:よく遊び よく学べ


大野 幸則

子どもたちが、素直な自分の気持ち、悪いことを許さない、友達への思いやり、あこがれなどを体いっぱい、声を限りにあらわします。登場人物に自分を重ね、我が事のように劇の中に生きているのです。そんな場面に直面すると、私達大人も、心が洗われるような思いになります。
 「最近の子どもは!?子どもらしくなくなった」という嘆き声をよく耳にします。兄弟が少なく、自分の部屋で一人で自分だけで楽しみます。外で友達と遊ぶこともめっきり減りました。スマホが必需品で、手放せません。子どもたちはバラバラに、個として生きていて、現実世界にはいないで、バーチャルな世界に生きているという言い方も出来ます。
 学校教育は点数で評価されています。子どもたちは勿論、先生方もです。退職した校長先生から伺った話です。先生方は年度初めに目標を持ちます。例えば、「クラスの子どもが80点以上とれるようにします」と。年度末にこれが判定され、十分でないと「C」「D」と評価され、この評価は転勤先にも通知され、C教師、D教師と刻印を押されるそうです。そこには、子どもたちの心の成長を大事にする教師像は伺えません。
 子どもたちだけでなく、社会がそのようになってきている反映ともいえます。「某知事はこのような社会環境の典型的な人格だ」とその校長先生は話されていました。
 私は、子どものための舞台公演の仕事もしています。子どもたちの、日常とは全く異なる表情を見せる機会に数多く遭遇します。劇の中にのめり込み、登場人物に感情移入し、励まし、怒り、泣き、笑う子どもたちです。先生方も、普段見せない子どもたちの姿に驚かれます。そんな子どもたちに出会うと、子どもの本質は変わっていないと確信します。
 子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)をご存知でしょうか。国連子どもの権利委員会から日本に対する勧告がありました。日本の教育システムに対しては、非常に厳しい懸念が示されています。あまりに競争的なため、遊ぶ時間や、からだを動かす時間、ゆっくり休む時間を奪い、子どもたちが強いストレスを感じていること。それが発達上のゆがみを与え、子どものからだや精神の健康に悪影響を与えていることが指摘され、適切な処置をとるよう勧告されています。 
 子どもたちの置かれている状況を見るとこの勧告の通りだと感じます。
  6人に1人が貧困で奨学金返済が出来ずに自己破産する若者が増えていると言われます。「世界で最も貧しい大統領」ホセ・ムヒカ氏は、環境問題とはCo2削減、水源等環境問題だけではなく、人々が幸福に生きる環境こそ大事だと話しています。
 未来を担う子どもたちが、明るく笑って健やかに育つそんな毎日を送れることを願わずにはいられません。それは大人達にもいえます。教育は共育、子どもたちと一緒に育つ、そんな大人でありたいと願い続ける日々です。
 「よく学び よく遊べ」と子どもたちと生きた良寛さん。
 元校長先生の話は心に残りました。