会報誌(DDKだより)

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1998年12月発行 第55号 DDKだより

巻頭言:「安定化」制度を生かすために

理事  亀井 賢伍       
       商工中金出身
       元第一経理相談室長
       前専務理事

  
 


 昨年秋から顕著になった銀行の貸し渋りは①企業経営を直撃し②信用収縮を通じて景気の足を引っ張りさらには③自殺、倒産、失業といった社会問題にまで深化してきました。
 政府も市中金融だけで不十分として政策金融の枠を拡げましたが、どちらも、貸し手側の旧態依然とした体質から事態は改善されませんでした。
 この間隙を縫ってノンバンクが業容を拡大しています。忌むべき現象です。ことの深刻さに押され、また銀行への公的資金投入60兆円とのバランスもあり、政府は10月1日から「安定化」(金融安定化特別保証制度)貸付に踏み切りました。
 この制度は、従来の政策金融の域を超えた、もっと言えば金融常識を超えた画期的なもので、企業更正金融或いは社会政策的金融とでも呼ぶべきものです。社会問題対応型の金融とみてよいでしょう。
 5,000万円の無担保別枠もさることながら、ミソはネガティブ・リスト方式にあります。(詳細は本誌11月号、金融相談欄参照)
 雨の日に傘を貸さない銀行が競って貸出しています。この旱天の慈雨により一息ついた企業が会員のなかに多数あります。
 問題は、この制度も金融であって助成金ではなく返済が必要だということです。
 据置期間が満了し、元金返済が始まるころには景気が回復していることを借り手は一様に願っています。
 どのような逆境にあっても、景気や環境のせいにせず、自力で進路を切り開くのが企業家の真骨頂と言えますが、いまの不況は個別企業の努力の限界を超えています。
 安定化資金を真に生かすためにも、実体経済の回復が不可欠です。
 来年度はプラス成長になるよう、景気回復に官民あげて全力でとりくむことが切実に求められます。