会報誌(DDKだより)

DDK Newsletter

2017年05月発行 第276号 DDKだより

人事労務相談:半日休暇の午後出社で残業代が増える?

Q.当社では半日の年休取得を認めています。しかし、半日休暇の午後に出社し、所定終業時刻を過ぎても勝手に勤務を続ける社員がいます。その際、時間外手当を支払わなくてはならないでしょうか。

今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁

A.ご質問には、半日年休の効果的な運用と時間外計算の考え方が含まれています。
 前者の半日年休取得は、法律ではなく、通達で運用が認められています(昭和63.3.14基発150号)。理由は、年休が午前・午後に分割できることにより、私用を効率的に済ませ、仕事に戻ることができるからです。使い勝手のいい制度ですが、ご質問のように、頻繁に、残業代が増えてしまうようでは、会社としては見直しを考えざるを得ません。そこで、法で認められる時間年休の導入も考えられますが、取得できるのは5日分の所定労働時間で、繰越計算が煩雑なため(労基法第39条4項)、あまり小規模の事業所では、活用されていません。実際、本来の趣旨ではなく、遅刻の穴埋めに使われることが多いのです。見直しする場合は、どちらが貴社の職場の実態に合っているかです。
 午前・午後の区分については、社員代表との話し合いで任意に定めることができます。例えば、午前9時から午後6時(休憩は正午から1時間、実働8時間)の勤務時間帯から休憩を除き午前と午後に区分すると午前は3時間、午後は5時間の就労時間です。損得もありますが、長さから言えば、公平な区分とは言えません。バランスをとり、午前休暇を午前9時から午後1時までと定めることもできます。昼休み時間に待機を強制するようで、社員には喜ばれないでしょう。
 次に後者の問題は、午前の半日休暇を終え、午後から出勤し本来の終業時刻を超えて働いてしまう場合の時間計算です。午前午後の区分は、仮に午前は9時から正午、午後は1時から6時までとします。午後9時まで勤務した場合は、形式的に、3時間残業したことになります。法的には、この3時間分は終業時刻を超えていますが、実労働時間が8時間を超えていないので、通常の時間給分が発生します。無給ではありません。事例の場合、実働8時間を超える午後9時以降まで、勤務した場合に割増手当の必要な時間外手当が発生します(労基法第32条2項)。実働8時間を超える場合に割増手当が発生することに留意します。
 午後から出社した方が得となるような不公平な制度なら、職場のモラールが下がりますから注意して下さい。