会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2017年09月発行 第280号 DDKだより
人事・労務相談:就業規則の意見聴取とは
Q.パートも入れ社員10名の小さな会社ですが、人手不足による求人のため就業規則を作ろうと考えています。作成したら「社員代表の意見を聴かなければならない」そうですが、理屈っぽい社員がいるので心配です。今月の相談員
経営コンサルタント
社会保険労務士 石田 仁
A.社員10名というのは、パートとか正社員等名称にとらわれず、常に、ほぼ10名程度が働いている状態を指しています。したがって、社員が合計10名以上いるならば、就業規則を作成し、届出ることは、法律上の義務です(労基法第89条)。
その際、「社員代表の意見聴取」と言うのは、確かに面倒なことです。理屈っぽい社員がいる場合には、日頃の不満があれば「あれこれの批判」を浴びることがあるからです。ただ、ここで言う「意見を聴取する」の意味は、届出の前に社員の代表者に就業規則の内容を伝え、「意見があれば、聴かせて欲しい」ということです。社員側に同意や承諾を求めるものではありません(昭25.3.1基収525)。結果的には、意見聴取手続きを踏んでいれば労基法違反とはなりません。
会社とまったく異なる反対意見であっても、「その反対事由の如何を問わず、その効力発生についての他の要件を具備する限り、就業規則の効力には影響」はありません(昭24.3.28基発373)。
ただ、就業規則の作成は、会社に最終決定権があるといっても、社員に反対が多い内容や取り入れて欲しい事項につき、何の反応もしないやり方では、早晩、トラブルが発生する可能性もあります。求人の効果も小さいかもしれません。
就業規則の意見聴取は単なる手続きにすぎないと考えないで、真摯に社員の声に耳を傾けるチャンスと考えることが大切です。理屈っぽい社員が貴社で実現不可能な問題を提起するにせよ、会社としては無視しないで、その声を反映させる位の心構えが必要でしょう。その方が実務に活かせるし、求人にも効果的です。
労働基準監督署長に提出する意見書には、賛成意見だけでなく、不十分な点への提案があってもいいのです。