会報誌(DDKだより)
DDK Newsletter
2017年12月発行 第283号 DDKだより
巻頭:共に生きるという人間の本然を
大野 幸則
マダカスカル島を経て、窓から見るアフリカ大陸はどこまでも平らな大地、無数の川の蛇行と三日月湖の散乱する草原。風紋のような山脈。日本の大地とは全く異なる景色が広がっていました。
第19回アシテジ(国際児童青少年演劇協会)世界大会に参加するため、初めてアフリカの地、南アフリカのケープタウンを訪れました(5月16~27日)。
子どもたちのために演劇・パフォーマンスをするプロの劇団等の世界的なネットワークが、3年に一度開く世界大会・フェスティバルです。2020年東京オリンピックの年に、東京での開催を誘致することが私達の役割でした。1990年にネルソン・マンデラ氏が刑務所から出所した時に演説をした有名な市庁舎ホール等で開かれました。
1652年オランダ東インド会社の補給基地として発達し、市庁舎や教会など歴史的な建物と新しい高層ビルが混在し、道行く人々も白人と黒人、裕福な人々と貧しい人々(通りかかる私たちに物乞い、抜き取り)が生活している街。日本人が名誉白人といわれた時代がふと思い出されます。
子ども達対象の優れた舞台芸術作品が披露され、中でも日頃接することの少ないアフリカの作品に多く触れることが何よりの収穫でした。とにかく抜群のリズム感とハーモニーが、周りの人たちの気持ちを巻き込んでいきます。言葉も伝える通信手段だったドラム、伝統が体内に脈打っているかのように離れている場所同士の演奏もアンサンブルになるのです。譜面も楽器も使わずハーモニーが生まれます。相手の、互いの心に寄り添う気持ちがハーモニーを生み出すのだと思います。共に生きるという人間・人類の本然を感じます。
スラムの子ども達とも日曜の一時を過ごすことができました。そこでも生活の中に文化・音楽が有るという「幸せ」を実感しました。ふと「幸せ」って何だろうとも考えさせられました。こんなシーンは日本社会ではなかなか見ることがありません。生活の何気ない場面で輝いている人々に接することができました。日本の子どもたちのお芝居に見入る姿に重なる幸せを感じ、それは私にとって至福の時でもありました。
2020年オリンピックの年に世界大会を東京で開くことが満場の賛同をもって決定された。身が引き締まる一瞬でした。アプローチとして2018年2月、東京参宮橋・オリンピック記念青少年センターでアジアフェスティバルを、同時に名古屋、神戸灘、豊岡、鹿児島でミニフェスティバルが行われます。