会報誌(DDKだより)

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2018年03月発行 第286号 DDKだより

巻頭:何気ない日常に、何かを感じ取ること


石田 仁

 日頃の運動不足を補うため、土日は日に2万歩歩く目標を課しています。新聞か何かに平均1日8千歩、週に5万6千歩歩けば、健康が維持されるとあったので、平日の5日間は少なくとも3千歩、ならば土日に2万歩歩けば目標達成と考えたからです。少し、寒さが和らいだ、2月の半ば、近所の芝川上流へ散歩する。  
 途中の家々の植え込みからは、黄色の?梅の香りが、匂う。そしてあちこちで鮮やかなピンクの梅も咲き誇っています。15分くらいで土手に入ると、薄氷の残る足元では、雑草が氷雪の寒さに耐え忍び、地面に這いつくばるように葉を拡げています。開化の春の備えです。何度踏まれても立ち上がるその生命力こそが春へのエネルギー。
 川岸の土手は動植物の宝庫。大きく深呼吸をすると気持ちがいい。ウォッチャーではありませんがこの時期は、鳥ではツグミ、ヒヨドリ、ムクドリ、いつもながらのセキレイ。川面に鴨や鵜の仲間、橋の欄干にはカモメもいます。雑草は、それこそ地面に這いつくばって凌いでいますが、ホトケノザもちらほら咲いています。数人のご婦人が土手の斜面で草取り。何やらビニール袋にどっさり収穫していました。誰もが知っているツクシは、ほとんど見かけません。聞いてみたら「からし菜よ!」と答えが返ってきました。おひたしや漬物においしいそうだ。
 玄関先にあるオリーブの鉢植えは、10年間、ほとんど水をやっていませんが、暑さ寒さに耐えながら、いつも緑をたたえています。一昨年、奇跡的に1粒が実り驚きました(何でも木が2本以上必要とのこと)。敬意をもって食せず、熟してから鉢植えに戻すことにしました。
 猛スピードで走り抜ける世の中。遅れずに真正面にぶつかって対処することも必要ですが、遅れても少し立ち止まり、心をニュートラルにする時間が欲しい。   
 ふと、何気ない自然の営みに何かを感じ取ることがあります。立ち止まる時間を大切にしたい。そこからあきらめない忍耐力や前向きなマインドが生まれる。世に言い伝えられる昔からコトを成し遂げる処方箋ではないかと思う。