会報誌(DDKだより)

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2018年05月発行 第288号 DDKだより

巻頭:芸術文化を生かした経済の発展、生活の向上を


大野 幸則

 このところ街に外国人観光客が溢れています。こんなところにも!と。
 2月に、アシテジ(国際児童青少年演劇協会)アジアフェスティバルを1週間開催しました。子どもたちのためのプロの劇団等による舞台芸術祭典です。日本開催は6年ぶり、東アジア、東南アジアからの参加でしたが、今回は南アジア、西アジア、中央アジア、更にアジアではありませんがオセアニアを含め20カ国ほどの参加をいただきました。日本文化への関心が伺えます。
 日本文化と言っても伝統的な文化があり、新しい文化があります。例えば漫画・アニメをとっても、実は全く新しく湧きだしたものではなく、「鳥獣戯画」など絵巻物、北斎漫画や江戸写し絵、とその系譜をたどることが出来ます。身の回りには、受け継がれた、生活に根ざした文化があります。よりよく生きていく上での日々の生活文化が有り、時に芸術文化によって生きる上での感銘を受け、人生はその積み重ねのように思われます。そのように生きてきた祖先から受け継ぎ、今また、磨きをかけようと心がけてきました。
 今、国の芸術文化政策が大きな転換を起こしています。振興法から文化芸術基本法へと進め、教育基本法を進める上で、教育と芸術文化を合わせ発展させるというものです。2020年のオリ・パラを節目とし、その先を目指したものです。
 いくつかの柱立てがある中で、経済活動への展開を第1に掲げるようになりました。今ある芸術文化を、「儲ける」ための道具に使うという姿勢が強く打ち出されました。「本当にいいのか!」と叫んでしまいました。目先の「儲け」の手段としてしか見ない姿勢は、芸術文化を滅ぼす道につながります。芸術文化を生かした経済の発展、生活の向上の道こそ目指すべきです。芸術文化を豊かに発展させることこそが国の芸術文化政策と考えます。
 文化芸術はまた、共生社会形成に大きな役割を果たしてきました。祭りの屋台や山車、衣裳、農作業や共同作業になくてはならないものでした。日々の生活の一つ一つも、培われた文化に裏付けられています。芸術文化を教育の中で生かすと初めて明言され、また地域社会の形成に役割を果たすことも、新しい方針の中で示されました。地域で共に生き合う共生社会が益々求められています。それぞれの地域の特色の中で文化は育ち、子どもたちは育ちます。芸術文化は別世界にあるのではなく、人々の生活、人生と共にあります。日本各地で、そんな取り組みが少しずつ進んでいます。
 皆様のご理解と一層のお力添えをいただければとお願いいたします。