会報誌(DDKだより)

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2018年07月発行 第290号 DDKだより

巻頭:公文書管理法の改正を急げ


河原 八洋

 6月6日内幸町のプレスセンターで、2018年日本記者クラブ賞と日本記者クラブ特別賞の受賞者による講演会がありました。
 「特別賞」には毎日新聞社の「点字毎日」が選ばれました。驚いた事に、創刊は大正11年で、毎日新聞社創業50周年事業として立ち上げたものです。国内には点字新聞はこの1つしか無く、戦時中も休まず発行されて来たそうです。お話をされたのは佐木あやとさんという全盲の記者で、地下鉄ホームから転落して電車に引きずられた経験の有る方でした。スタッフは6名で週1回の発行です。1963年に菊池寛賞を受賞し、これを機に「点字毎日文化賞」を創設したり、「全国盲学校弁論大会」を主催して来た事が今回受賞に繋がりました。
 一方日本記者クラブ賞は所属する記者の方々の投票で決まる賞で、今年は朝日新聞の「奥山俊宏」記者でした。奥山さんは、2011年「国際調査報道ジャーナリスト連合」のメンバーに加わり、パラダイス文書に記載された1340万件の顧客情報を調査し世に出された方です。今回は米国公文書館で秘密解除された膨大な公文書を読み解き「秘密解除 ロッキード事件」(岩波書店発行)を世に出しました。当時隠されていた真実が、40年を経て大統領府、非公開だった委員会、議会、産業界、日本政府との交渉記録など基にしたレポートは「調査報道の手本」として多くの記者の評価を得て、受賞と成りました。これで昨年、記者として初めて「司馬遼太郎賞」を受賞しています。
 この本を読まれた方も多いと思いますが、私は講演を聞きながら、本の内容よりも米国では議会で誰のために議論をしているのか、そして議事録や文章は国民共通の財産であると言う、民主主義の検証可能な部分が成り立っていると思いました。よく政治家の言う「評価は後世の歴史家に委ねる」と言う事がこのことだと思いました。
 今の日本では自衛隊の「日報隠蔽」事件や、財務省や文科省の様に記録を1年も経たずに破棄してしまえば真実を分からなくしてしまう。有っても都合がいい様に改ざんして残す。真実を歪め、隠し、検証不可能にすることが有能な官僚の大切な仕事に成っています。
 映画で、終戦が決まってあわてて書類を持ち出して燃やすシーンをよく見ますが、あれは後々の検証をさせない為の行為です。公文書を改ざん、消却することを禁ずる、「公文書管理法」の改正を早く行うべきだと思います。