会報誌(DDKだより)

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2018年07月発行 第290号 DDKだより

年金相談:年間平均による保険者算定とは?

Q.当社は3月~6月は業務の都合で例年残業が多く発生します。そのため7月に提出する算定基礎届(算定)で毎年のように社会保険料(標準報酬月額)が上がってしまい、会社の負担も大きくなるし従業員からも何とかならないのかと不満が起きます。いい方法はありませんか?

今月の相談員
特定社会保険労務士 服部 雅恵

A.社会保険料(標準報酬月額)の決定には(1)入社時の資格取得時決定、(2)毎年決まった時期に行われる定時決定(算定)、(3)固定給の改定により大幅な変動があったときの随時改定、(4)産前産後・育児休業者が職場復帰し報酬に変動があったときの改定、があります。
 ご質問の件は(2)の算定のことで、毎年1回7月に4月・5月・6月に支払われた報酬を届出て、その年の9月から翌年8月までの保険料が決定されます。業務の繁忙期は残業が多くなるため算定に重なると、支払われる報酬も高くなるため、おのずと保険料も高くなってしまいます。ご質問のように算定結果が著しく不当になる(保険料が高くなる)場合は通常の届出方法ではなく、「年間平均による保険者算定」で届出をすることができます。
 年間平均による保険者算定とは、当年4月から6月の平均報酬と、前年7月から当年6月の平均報酬の差が標準報酬月額保険料額表に当てはめて2等級以上生じる場合であって、業務の性質上例年発生することが見込まれる場合、申立てにより年間報酬の平均額で保険料が決定されます。
 届出方法は事業主が業務の性質上繁忙期になることを「年間報酬の平均で算定することの申立書」で申立てし、また年間平均を用いて算定することの「従業員(被保険者本人)の同意等」を算定と一緒に届出ます。4月から6月の3か月平均額と年間平均額に2等級の差がなければ、通常の算定になります。
 本年10月からは(3)の随時改定においても、新たに年間平均による保険者算定ができるようになります。算定時における年間平均との違いは、非固定的賃金(残業代)を年間平均することと1等級以上の差でも保険者算定の対象となることです。詳細は省きますが業務の性質上、例年見込まれる場合の申立てであることには変わりませんので、たまたま一時的な繁忙と昇給時期が重なった改定では保険者算定の対象外となります。
 保険料は健康保険では保険給付の基礎に、厚生年金保険では将来もらえる年金額の計算の基礎となりますので、本人の同意が得られないときは通常の算定・随時改定によりますのでご注意ください。