会報誌(DDKだより)

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2018年08月発行 第291号 DDKだより

サービスの差はどこに


石田 仁

 連日の猛暑で冷たいモノが欲しくなる。最寄駅のデパ地下に入っているスーパーでアイスを購入。並んだレジは複数体制で、店員さんは、一人がお客さんを待たせないようレジをこなし、もう一人が素早く持ち運び時間を聞き取り、保冷剤をたっぷり入れてくれました。他方、隣駅だが、遅れて開店した某デパート系のスーパーでは、一人体制の店員は別の顧客と愛想話をしながら、順番待ちをしている私に応対。レジ袋にアイスをつめながら、「保冷剤はレジ横のカウンターで貰って下さい」と一言。ここでは、保冷剤は他の場所でもらうシステム。私達のよく使う日常のスーパーなら保冷剤はセルフサービスが普通なので驚きません。この例は、高級スーパーの話です。お客に向き合っているのはどちらでしょうか。サービスの差別化をしているつもりでも、後者にはお客への気配りがあるように思えませんでした。単なる分業でしかありません。他社より優位に立つことは、必ずしも効率化の仕組みだけでないことが分かります。
 バブル以降、全国各地のホテル旅館等の競争も激化し、ずっと安売りが続いています。その為、数々のサービスが犠牲になっています。私たちが最初から「安かろう」を選択しているならまだ納得できますが、それなりの価格で選んだのに十分なサービスを受けられないことがあります。例えば、到着後の高級老舗旅館での客室案内。客室係の仲居さんが、部屋の前で立ち止まり、お茶等については、「後は、お客様の方でお願いします」と言われるとびっくり。せっかくの寛いだ気持ちも、開放感もいっぺんに吹き飛んでしまう。おもてなしが日本的美徳なら、それはかなり薄まっていると感じざるを得ない。
 この二つの例は、サービス業の生産性について考えさせられる。アイスの例で、好感が持てたのは、二人の店員さんの素早い言動・所作である。あっという間にアイスと保冷剤が一緒になる。お客も満足する。他方、高級旅館で客室係がお茶を入れないのが当り前かどうかわかりません。人手不足や最近のお客さんの意向(自分でやるから不要)等いろいろあるでしょう。実感として「なぜ?」の気持ちになります。このようなサービスは無駄だからとカットしてしまえば、確かにサービス業の生産性は高まります。
 ただ、世の中が求めている方向なのか疑問に思う。