会報誌(DDKだより)

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2018年12月発行 第295号 DDKだより

巻頭:キャッシュレス化は急(せ)かない


石田 仁

 先日、知人に「チャージしなくてできるスイカがあるよ」と言われたが、使った金額の累計がどれくらいなのか把握できないとブレーキがかかってしまう。せいぜい、少し高い買い物をするときにカードを使い、駅やコンビニでスイカを使う位が自分の水準と思っている。面倒くさいことが嫌いな典型的な現金主義です。
 “なぜ、キャッシュレスに”と考えていたところ、ある日の新聞の一面見出し。「給与デジタルマネー解禁」が目に入る。綴っていくと「消費増税分還元に壁」、さらに、「無人店舗、米中追う日本勢」とキャッシュレスに関する情報が多い。
 紙面の「給与デジタルマネー」は、銀行口座を通さずにカードやスマホの資金決済アプリに送金できるようにする仕組み。口座開設の手間を嫌う人々に便利と言う。「消費税還元分に壁」とは、来秋の消費税増税対策として浮上している中小の小売店でクレジットカードを使った人を対象に2%をポイント還元すること。カード会社のシステム改修費用、さらに、お店の方もカードリーダーの導入費用や手数料が発生する。壁はこの難関を指す。増税による消費の冷え込みを防ぎつつ、キャッシュレスの促進という二兎を追うからである。クレジットを使わない人にはプレミアム商品券を考えているから驚く。
 では、「無人店舗、米中追う日本勢」の意味は何か。すでに、世界では、巨大ネット通販自身が、小売業にAIを活用し、無人店舗の導入を始めている。当然キャッシュレスである。日本でもネット通販の影響で、小売業の復活・進化はテーマである。無人店舗で、個人認証システムや商品を検知するセンサーを使い、スイカやスマホで決済する。
 そもそも、政府にはキャッシュレス化を2025年までに4割に引き上げる目標があり、経済活性化の切り札と考えている節がある。新たな成長や経済の活性化は、需要を創造し、販売チャンスを作り、消費を増やす。
 確かに、便利で手間は省けるが、収益が向上するかどうかはわからない。庶民にとっての使い勝手も考えず、キャッシュレス一辺倒に突っ走るやり方には疑問が残る。現金で決済したい人は結構いる。自由に選択できる方がいいのではないか。