会報誌(DDKだより)

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2019年02月発行 第297号 DDKだより

巻頭:『忖度』はこうして起きた


河原 八洋

 一昨年の流行語大賞に選ばれた「忖度」の発生実例が、元NHK記者相澤冬樹氏の『安倍官邸VS.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』と題する本で紹介されています。
 第1章冒頭に「森友事件」の発端となった国有地売却額の情報公開を請求した、木村豊中市議の記者会見原稿から始まります。書籍14Pに相澤記者の作成原稿。次の15Pに上司に当たるYデスクが、内容を組み替えて放送に使った原稿。この2つを対比して解説しています。
 『数多くある土地取引の中でこれだけが契約相手の利益を害する恐れがあるとして、売買金額が開示されていない。そしてこの小学校の名誉校長に、安倍昭恵総理夫人が就任している。誰でも「えっ?」と思うだろう。これがニュースの最大ポイントなのだ。だから私はリードに安倍昭恵名誉校長のことを書き、本文にも明記した。しかしYデスクはリードからも本文からもこの事実を削った。うまいのは文末に木村市議が発言した言葉として、その要素を残していることだ』
 確かに「書かなかった訳ではない」がニュースを見ている人の受ける印象が全く違ってくる。このYデスクは上層部からの指示で書き換えたのでは無く、ごく平凡な出来事として、当たり障りがない様に焦点を外したのだ。そしてまたこのニュースは東京では不要とされ、全国放送はされていない。これが「NHK東・西局の忖度」であるが、翌日「朝日新聞」が朝刊で大きく報じて火を付けた。
 その後国会で売却額が追及されると、査定額9億5600万円から8億1900万円値引きをした売値が示され、今日に続く大問題に成って行きます。
 朝日新聞はじめ民放各社もワイドショーなどで取り上げてもNHKは大阪以外放送し無かった為、視聴者から「なぜ取り上げない」との苦情が寄せられた。安倍首相が「私及び家内がこの問題に関与して居たら首相はもちろん、国会議員も辞める」との発言が出てから、NHKも全国ニュースに流す様に成ります。
 一旦「森友」は全国では扱わないとしたものを戻すには、相当の時間と力が必要に成ります。相澤記者も最初の原稿が書き換えられた時は「腰が引けた判断だ」と不満に思ったが、この判断を受け入れています。
 社会全体が誰に言われる訳でも無く「忖度」で動いていては、イノベーションなど起こせる筈がありません。今日日本の大企業の停滞はこれによるものと思われます。厚労省の目に余る不正集計も、アベノミクスへの忖度に見える。流行語「忖度」は平成と共に終わりにしたいものです。