会報誌(DDKだより)

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2019年04月発行 第299号 DDKだより

巻頭:心が洗われる


大野 幸則

 今の新座市栗原に引っ越してから30年近くが経とうとしています。地名通りの栗林がちらほら見えます。早いものです。まだあたりには屋敷森の残った地域です。特急で二つ目ひばりヶ丘からバス路線があります。一つ目のバス停名が「郵便局前」二つ目が「別れ道」三つ目が「栗原」「火の見下」「貝沼」と続きます。ちょっと懐かしいではありませんか。
 散歩に出て近くの小川を覗き込むと「わさびとるべからず」の小さな注意書き。「あっ!わさびがあるんだ」。すぐそこの武野(たけしの)神社の湧水を水源とする小川でした。ひょっとしたらこのあたりはハケと呼ばれる河岸段丘の地形。目の前の黒目川を遡ってみると合流する落合川は東京湧水源57の内3つの湧水源だけによる珍しい川でした。
 二組の家族カモ、カワセミが好事家を喜ばせています。葦の間から覗かせる真っ赤な硬い額板がいいですね。
 覚えていらっしゃる方も多いかと思いますが、一世を風靡した大岡昇平の「武蔵野夫人」の舞台は多摩川のハケを美しい舞台にしたベストセラー恋愛小説でした。
  先日仕事で三島へ行き柿田川の事を思い出しました。全長1.2km、流水量1日100万立方メートル、日本三大名水とも言われています。わずかに1kmです。その流れのほとんど湧水です。それも大河と言っても過言ではない姿です。とうとうと流れる姿はちょっと想像できないかと思います。勿論富士山の伏流水です。
  これほどの美しい川に接していると、水と人とに関わるさまざまなことが思われます。
 身を清める、禊ぎする、水に流す。
  人の生き死にに関する言葉です。それも新たに生き直す。
 悠久の流れと果てしない人々。