会報誌(DDKだより)

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2019年05月発行 第300号 DDKだより

金融・経営相談:個人事業主版事業承継税制の創設と金融支援策 ―中小企業経営承継円滑化法の改正―

Q.2019年4月施行の、個人事業主に対する「事業用資産承継税制」および「事業承継のための金融支援策」について概要を教えてください。

今月の相談員
中小企業診断士
中小企業組合士 伊藤 勝

A.
(1)税制改正について
 従来は法人の事業承継についてのみ適用されていましたが、今般、個人の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)が創設されました。後継者である受贈者又は相続人等が、事業用の宅地、建物、減価償却資産を贈与又は相続等により取得し、「経営承継円滑化法」(*<1>)
の認定を受けた場合は、一定の要件のもと納税を猶予(後継者が贈与、相続、遺贈により取得した事業用資産に係る贈与税・相続税の100%が猶予)し、後継者の死亡等により、猶予されている贈与税・相続税が免除される制度です。
 本制度の適用を受けるためには、経営承継円滑化法に基づき、2019年4月~2024年3月までに「個人事業承継計画」を提出し、都道府県知事の「認定」を受け、事業を継続することが必要です。
 なお、「個人事業承継計画」には、後継者候補(個人事業承継者)の氏名や事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継の事業計画等を記載し、その内容について「認定経営革新等支援機関」(*<2>)による指導及び助言を受ける必要があります。
 特に税制に関しては、最寄りの税務署又は税理士等の専門家にご相談ください。
(2)金融支援:融資・保証制度
 円滑な事業承継のための必要資金としては、?後継者が、相続等で分散した自社株式や事業用資産の買取資金、?後継者が、相続や贈与によって自社株式や事業用資産を取得した場合の納税資金、?経営者の交代により信用状態が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件の悪化などが考えられます。
 これらの必要資金として日本政策金融公庫等の低利融資と金融機関から借り入れる場合の信用保証枠の拡大が用意されています。 


(*<1>)経営承継円滑化法
 中小企業の円滑な経営承継を支援するために、事業継承時の、贈与税・相続税等の支払い猶予や免除を、一定の要件のもと認めることと、必要となる資金の低利融資、信用保証枠の拡大による金融支援策を講じるもの。
(*<2>)「認定経営革新等支援機関」
 商工会・商工会議所・金融機関・税理士等国が認定した公的な支援機関