会報誌(DDKだより)

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2019年11月発行 第306号 DDKだより

巻頭:AI予測を考える


石田 仁

 AI(人工知能)の技術革新が様々に影響を与えています。かつて、手塚治虫は80年代の作品で、マイコンが一人一台の時代を描き、毎日の献立、今後の成績、友達の適格性、将来の人生をも予測してしまい、社会的格差の広がりや人間性を喪失していくことに警鐘をならしました。そのAIが人間の頭脳を超えると言われる転換点が今世紀の半ばに到来します。
 AIを使い日本の未来、2050年を予測した研究が登場しています。
 今年の正月、朝日新聞の元旦版に、「個人の生き方 新時代を左右 2050年AI予測シナリオ」が掲載されました。日本の債務超過、人口減少、格差、コミュニティーの崩壊に直面し、どんな政策が必要か、広井良典氏(京大教授)等が日立と共同して行った研究が紹介されています。
 実際2万通りのシナリオがあるそうだ。解説によれば、そこから要素をいくつも絞り込むと、未来は、日本社会の持続可能性につき、「都市集中」か「地方分散」かに大きく分岐する。前者に進めば、都市への一極化がすすみ、地方は衰退し、出生率の低下と格差が拡大し個人の幸福度や健康寿命は低下。財政は、地方を切り捨て都市への集中で持ち直す。反対に、地方分散に進めば、地方への人口分散がおこり、出生率は持ち直し、人々の健康や幸福感も増す。ただ、地方の環境を悪化させ、中央財政は不安となる。これが7年から9年後に直面する分岐点です。
 持続可能な地方分散型に転換するには、その分岐点から16年から19年の年月を要する。地方分散が成功するには、地域内の経済循環が十分に機能し、環境の悪化を食い止めなければならないからです。研究では、二度の分岐点は交わらないと言う。日本が生き残るには、ヒト、モノ、カネが地域に循環する分散型の社会へ舵をきることと予測しています。
 確かに、地方や田舎は自然環境が素晴らしいだけでは、都市への人口の流出は止まりません。働く場所があり、学校があり、病院があり、循環エネルギーや最低限の交通インフラがある。それなら、多少不便でも「住んでみよう」と思えるような地方の再生・充実が必要です。今だけ、自分だけ、お金だけから抜け出し、いかに生きるか。AI予測を豊かに成就させるためにも、個人の価値観、生き方が問われていると思います。