会報誌(DDKだより)
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2019年12月発行 第307号 DDKだより
巻頭:消費税は消費にかかる税?
齋藤 正広
10月1日、消費税率がついに10%へと引き上げられました。たとえ2%でも庶民の厳しい家計にとっては大きな負担です。9月最後の週末、スーパーは大量の日用品を買い込む客で溢れかえりました。
ところで、消費税は誰が負担する税なのでしょう?多くの方はその名の通り「消費」者が負担すると思われているでしょう。確かに税率が上がれば、商品やサービスの値段も上がります。上げられればの話ですが… 一方EU等では日本の消費税と同じ税の構造であるのに、「付加価値税」(Value-added tax)と呼んでいます。
消費税を国へ納税しているのは、物の販売、サービスの提供をした事業者です。納税額をどのように計算するのか大雑把に説明しますと、税率10%の場合、売上×10/110-費用×10/110=納税額となります。
ところで、上記の算式を書き換えると次のようになります。
(売上-費用)×10/110=納税額
前述の算式は、売上、費用とも消費税の課税対象となるものに限ります。消費税は殆どの取引を課税対象としています。非課税として代表的な費用は、給料、賞与等の人件費です。つまりこの算式は、売上から、人件費を除く費用を控除した金額(これを付加価値と言います。)に税率を乗じた金額が納税額であることを意味します。
法人税の場合には最終利益が課税対象になり、赤字の場合には課税されません。しかし付加価値(人件費等を引く前の利益)は、よほどのことがない限り赤字にはなりませんので、会社は赤字でも消費税の納税は発生します。この消費税は「税」ですので事業者にとってはコストであり、本来、このコストを回収できる売上の価格設定をしなくてはなりません。力の弱い事業者は回収するだけの価格設定ができていないのが実情です。消費税の滞納が多発していることがこの事実を証明しています。
昨年、当社の顧問先に消費税転嫁Gメンが調査に入りました。消費税率が5%から8%になった際に、協力業者に対して「税率アップ分を支払っていない」と、1千万円を超える支払いを命じられました。社長は、「もともと税込(内税)で支払っている。協力業者はほぼ100%が個人事業の免税事業者であり、増税分の消費税を支払うことは納得できない」と反論しました。しかし、Gメンは支払わないなら公正取引委員会に通告するの一点張りです。実はこの会社は増税前から元請業者からの値下げ要請を何度も受け入れており、それでも自らは協力業者への値下げをしてこなかったのです。
消費税は私たち消費者が負担しているようで、実は企業に対する税という本質が見えてきます。税が上がればコストも上がる。その分を価格に上乗せできるのは力の強い企業と言えそうです。